球児の熱戦見守り続けた甲子園スコアボード 現在は3代目

[ 2014年8月9日 13:16 ]

球児たちの熱闘を見つめ続けてきた甲子園のスコアボード。写真は09年選手権大会決勝で中京大中京が10―9で日本文理を下した時のもの

 いよいよ開幕する夏の甲子園大会。今年は甲子園開場90周年ということもあって、例年以上に「歴史」の重みを感じる大会になりそうだ。長年、球児たちの青春を見守ってきたスコアボードにも、数多くのエピソードがある。そこでスコアボードの変遷から甲子園の歴史を振り返ってみたい。

◎初代は木製スコアボード

 甲子園球場が完成したのは1924(大正13)年。だが、このときはまだスコアボードは存在しなかった。工事の開始から完成までわずか4カ月半。さすがにスコアボードにまでは手が回らなかったのだ。

 スコアボードが完成したのは翌1925(大正14)年。木製でチーム名と点数を表示するだけのシンプルなものだった。

 この初代スコアボードが脚光を浴びた試合といえば、1933(昭和8)年8月19日に行われた第19回全国中等学校優勝野球大会の準決勝。中京商(愛知/現・中京大中京高)vs明石中(兵庫/現・明石高)の一戦だ。高校野球史上最長記録である「延長25回」の死闘となったこの試合、両投手の息詰まる投手戦で、スコアボードにはずっと「0」の表示が並んだ。

 延長戦になってもスコアは0-0のまま。しかし、この初代スコアボードは16回までしか表示ができず、17回以降は球場職員が「0」の板を釘で打ちつけながら継ぎ足していかなければならなかった。さらに用意していた「0」の板もなくなるとペンキで書いて継ぎ足したという。

 結局、0-0のまま試合はさらに進み、大会本部が「勝負がつかなくても延長25回で打ち切る」と宣言した、その延長25回裏。中京商は無死満塁のチャンスを作ると、内野ゴロの送球ミスの間に三塁ランナーが生還し、サヨナラ勝ちをおさめた。

 スコアボードに並んだ「0」の数は49。この試合で何よりスゴいのは、中京商の吉田正男が336球、明石中の中田武雄が247球でそれぞれ完投したことだろう。

◎2代目はコンクリート製で選手名も表示されるように!

 前年の「延長25回継ぎ足しスコアボード」はさすがに見辛いという理由もあって、翌年、スコアボードの全面的な改修が行われた。ちょうど甲子園誕生10周年にあたる1934(昭和9)年、スコアボードは木製からコンクリート製に変わり、表示は18回までになった。また、チーム名と点数表記以外にも選手名が表示される大きな変更が加えられた。

 この選手名や点数は、職人芸ともいわれた独特の明朝体で板に手書きされていた。選手1人分の板は約7~8キロと重い上に、狭いスコアボード内で作業が行われるため、夏場は猛烈な暑さに耐えなければならなかったという。

 戦争も乗り越えたこの2代目スコアボードは、約半世紀に渡って使用された。

◎伝統と革新の3代目

 約60年ぶりに甲子園に「甲子」の年が巡ってきた1984(昭和59)年、スコアボードが電光掲示板方式に変わり3代目に移行した。人力によって50年使われ続けた2代目スコアボードから一気に技術革新が進んだが、変わらなかったものもある。それは、見た目の印象だ。

 3代目のスコアボードは高さこそ大きく増したが、形や色合いは2代目とよく似ていた。また、電光掲示板に表示される点数や選手名の書体も、手書き時代の書体に似せて作られていた。伝統を重んじる甲子園球場らしい粋な計らいといえるだろう。

 このスコアボードを巡る珍事件といえば、1986(昭和61)年、第68回大会での宇都宮工高(栃木)vs桐蔭高(和歌山)の一戦があげられる。試合がはじまった時、宇都宮工高はスコアボードに「宇都宮」と表示された。当時は、3文字しか校名が入らなかったためだ。

 ところが、この表示を見た宇都宮工高の応援団が「栃木県では宇都宮工高は『宇工』と呼ばれているから『宇工』で表示してほしい」と大会本部に抗議。本部はその勢いに流され、試合中にもかかわらず「宇都宮」から「宇工」に表示名が変更になった。

◎これからも球児の姿を見つめ、映し出すスコアボード

 1984(昭和61)年以降は、スコアボードの表示方法の変化がテーマとなる。1993(平成5)年にスコアボードがカラー化。右半分がオーロラビジョンとなり、動画も流すことができるようになった。さらに現在ではスコアボードのLED化が進み、よりクリアな映像を省電力で楽しめるようになっている。

 このように、姿形は変われども、ずっと同じ場所で球児たちの青春を見つめ続けてきたスコアボード。この夏はいったい、どんなプレーを目撃し、オーロラビジョンに映し出してくれるのだろうか。(『週刊野球太郎』編集部)

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