物議醸した“苦言”…マエケン「ロッカーの雰囲気がイヤだった」

[ 2012年12月1日 11:40 ]

4月18日、DeNA戦に勝利しお立ち台で「今年のカープはやります!」と宣言したが…

野球人 前田健太(中) 

 前田健は怒っていた。5月20日、地元広島での日本ハム戦。屈辱的な敗戦から約1時間後、駐車場で待ち受ける報道陣にまくし立てた。

 「チームとしては100%勝たなければいけない試合だった。最悪。こういう試合をしていると上位には行けない」

 「先発にとって、1勝するのがどれだけ難しいか、1つ勝つのにどれだけ苦労するか。今までにない悔しさがある」

 自身は7回を6安打零封し、5勝目の権利を手にしていた。が、チームは4―0の9回2死から5点を失い、まさかの大逆転負け。2失策が失点に絡み、救援陣も3四死球、3安打と乱れた。

 発言は物議を醸した。賛同の声が上がる一方、エースにあるまじき行為と批判する向きも。「覚えています。悔しかったので、ヒートアップしてしまいました」。右腕は苦笑しつつ、背景にあった裏話を打ち明ける。

 「ロッカーの雰囲気がイヤだった。いつもの負けと同じ。試合とは関係ない話で盛り上がっていたりして、何だ、オレだけか…と。(試合終了直後に)ベンチ裏で囲まれていたら多分、あんな言い方はしなかった」

 2勝目を挙げた4月18日、DeNA戦。お立ち台で「今年のカープはやります!」と宣言して以来、同じメッセージを何度か発してきた。自身に進化を感じ取り、チームにも手応えがあった。それが一転、ムードを壊しかねない大逆転負け。危機感は募った。

 「ファンの方に“また今年もダメか”と思われる負け方。Bクラスだから、カープだから仕方ない、と思われるのは悔しい。言わなければいけない。そう思いました」

 エースと呼ばれて3年目。常に冷静で、感情をあらわにしたことは過去に一度もない。発言がどんな反響を呼ぶか、それも理解しているつもりだった。「ただ、家に帰っても落ち着かなかった」。妻の早穂さんが「そういうのも、いいと思うよ」と、理解を示してくれたことが救いだった。

 効果はあった。何よりも右腕自身が奮起した。5月26日のオリックス戦(ほっと神戸)こそ8回2失点で敗戦投手になったものの、6月2日の楽天戦(Kスタ宮城)から8月1日のDeNA戦(横浜)まで、破竹の7連勝だ。

 「アレだけ言って情けない投球をしたら“おまえが言うな”となる。プレッシャーはあったけど、自分をしっかりさせる意味でも言ってよかった」

 チームはAクラス圏内をキープしたまま、9月の勝負どころを迎えた。率先垂範を身上とするエースの思いは、しかし、かなわなかった。

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2012年12月1日のニュース