涌井が調停申請「より良い話し合いできれば」

[ 2011年1月13日 06:00 ]

年俸調停を申請した西武・涌井。3度目の交渉も決裂し、渋い表情で会見(2011年1月5日撮影)

 西武との契約交渉が難航している涌井秀章投手(24)が12日、日本プロ野球組織(NPB)の加藤良三コミッショナー(69)に年俸調停を申請した。涌井の代理人を務める大友良浩弁護士(41=はる総合法律事務所)がNPBを訪れ、申請書を提出した。申請が受理されれば球団初の年俸調停となる。

 大友弁護士は「昨年の成績で現状維持はありえない。球団は過去の実績を加味していると言っているが納得できない。双方の評価が違いすぎたので第三者の判断を仰ごうということになった」と申請理由を説明した。

 涌井は昨年12月から球団側と3度の契約更改交渉に臨んだが、球団の提示は変わらず、現状維持の年俸2億円プラス出来高払いを不服として保留。昨季はチームトップの14勝を挙げ、ローテーションを外れることなく5年連続2桁勝利をマークしたことを訴えた。7日には大友弁護士が最後の交渉に臨んだが、評価の見直しがなかったために調停申請に踏み切った。

 現在、熊本県内で自主トレに専念している涌井は球団を通じ「調停は球団と僕の考えや、1年間チームのために頑張った僕の思いを、第三者の方に聞いていただく立派なシステム。球団とより良い話し合いができれば」とコメント。同年代の日本ハム・ダルビッシュとは最近5年間の勝ち星で1勝及ばないだけだが、年俸は現時点で3億円の差がついている。球団側に査定システムの再考を訴える意味合いもある。

 同弁護士は希望額については明かさなかったが「本人が(2月1日の)キャンプインまでに決着をつけたいと話している」と、今月中の決着を望んだ。今後はコミッショナーが申請内容を精査し、受理するかどうかを決める。日本球界では01年の下柳(当時日本ハム=現阪神)を最後に年俸調停は行われていないが、11日にはソフトバンクの柴原も年俸調停を申請したばかり。エースの悲痛な訴えが、どう評価されるのか注目される。

 ▼西武・前田康介球団本部長 (球団と涌井の)双方が提示した金額に隔たりがあり、合意に達しなかった。申請が受理された際には、調停の中で球団の査定方法などについて理解を求めたい。

 【経過】
 ▼10年12月1日 球団側と1度目の契約更改交渉に臨み、現状維持の年俸2億円の提示を保留。「後半戦の事を言われました。本当だったらダウン査定と聞いてびっくりした」

 ▼同12月27日 2度目の契約更改交渉。代理人同席も提示額は変わらず。他球団のエースの成績を比較した資料を持参も「他のチームは関係ないと言われました」。

 ▼11年1月5日 3度目の契約更改交渉。自身初の越年も「最悪の事態を考えなくはないですね」と自費キャンプ突入も示唆。

 ▽年俸調停 野球協約の第94~96条に明記されており、正確には参稼報酬調停という。次年度の契約が合意に達しない場合、コミッショナーに調停を求める申請書を提出できる。受理されれば、熊崎勝彦コミッショナー顧問、堀内恒夫前巨人監督、石塚久弁護士から成る調停委員会が構成され、選手と球団から希望額とその根拠を聴取し、申請を受理した日から30日以内に調停は終結する。過去には落合博満(当時中日)らが申請。西武のG・G・佐藤は08年に申請したが受理されなかった。

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2011年1月13日のニュース