【パラリンピアン支える力】信頼が生む力 代えの利かないサポート役

[ 2016年9月12日 09:56 ]

女子タンデム1000メートルタイムトライアル(視覚障害) レースを終え、笑顔の鹿沼由理恵(中央)とパイロットの田中まい(右)

リオ・パラリンピック 柔道女子57キロ級

(9月10日)
 自転車女子タンデムに出場する視覚障がい者の鹿沼由理恵に不可欠なパートナーが田中まい(26)だ。2人乗りタンデム車の前方に乗り、ハンドル操作などをするパイロットを務める。

 本職はガールズケイリンの選手である。日体大時代にトラックとロードで数々のタイトルを獲得した競技経験を買われて、競輪学校時代の13年に関係者から声が掛かった。鹿沼とコンビを組んだのは2年前。14年8月のロード世界選手権のタイムトライアルで優勝するなどすぐに結果を残した。

 だが、競輪とパラ競技の両立は簡単ではない。昨年は鹿沼の故障もあって、田中は競輪に専念。ペアを一時解消した。それでも今年に入って再び鹿沼から誘いを受けた。田中は「私のことを信頼してくれている。鹿沼選手の気持ちに全力で応えなきゃいけない」と快諾した。

 5月以降は競輪を休み、パラリンピックの準備に専念してきた。昨年は競輪で約880万円の賞金を手にしたが、今年は4月までに約190万円稼いだだけ。収入を犠牲にしても「誰でも経験できる舞台じゃない。収入がなくても、それ以上の経験ができる。これからの競輪人生にプラスになる」と鹿沼のサポートに徹してきた。

 タンデム車で大事なのは2人の呼吸。「力があっても踏み込むタイミングがバラバラならロスになる。息が合えばタイムが出る」。スタートラインで田中が「せーの」と声を発し、2人は心を一つにする。鹿沼は言う。「フレームやパーツは代えが利くけれどパイロットに代理はない」。その信頼は絶大だ。

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