稀勢の里“やっちゃった”…白鵬不在の綱獲り初日にいきなり土

[ 2016年9月12日 05:30 ]

<大相撲秋場所初日>手で顔を覆う稀勢の里

大相撲秋場所初日

(9月11日 両国国技館)
 綱獲り大関に、いきなり土がついた。大関・稀勢の里(30=田子ノ浦部屋)は平幕・隠岐の海(31=八角部屋)にもろ差しを許すと、反撃できずに寄り切られた。合口のいい相手にまさかの黒星を喫し、綱獲りに暗雲が立ちこめた。連覇を狙う横綱・日馬富士は快勝したが、休場明けの横綱・鶴竜は黒星発進。大関・照ノ富士も敗れた。

 それは、自分に対する怒りだったのか。今年初場所以来の黒星発進となった稀勢の里は、報道陣の質問に無言を貫いた。まげを結い直している間に視線を上げることはなく、時折大きく息をついた。そして、立ち上がると同時に、悔しさをぶつけるように右太腿をバチンと叩いた。乾いた音が支度部屋に響いた。

 イメージ通りにいかなかった。稀勢の里は場所中の朝稽古で、若い衆を相手に立ち合いの確認をするのがルーティン。この日も鋭く右足から踏み込む立ち合いを6度行ったが、本番ではできなかった。しっかり当たれなかったことでもろ差しを許した。苦しい体勢でも左おっつけで強引に出たが、深い左下手を取られると抵抗できずに土俵を割った。隠岐の海が「大関は(立ち合いで)フワッとしていた。硬くなっていたんじゃないですか」と話したように、3場所連続で12勝を挙げている強さは出せなかった。独特の緊張感のある初日の土俵に、綱獲り大関がのみ込まれた。

 名古屋場所は右足を痛めながら12勝を挙げ、綱獲りをつなげた。「ファンに申し訳なかった」と言いながらも、治療を優先するため夏巡業の序盤を休場。苦渋の決断により、8月29日の番付発表後は十分な稽古を積めた。6日に佐渡ケ嶽部屋、7日に九重部屋へと出稽古も行い「いい状態」と言えるまでになった。だがフタを開ければ16勝2敗と圧倒していた相手に13年、昨年に続き、またしても秋場所で敗れた。

 稀勢の里の横綱昇進について、審判部は初優勝が条件と考えている。15日制となった1949年以降、初日黒星からの優勝は33度もある。ただし、連敗発進から優勝した力士はいない。望みをつなぐためには、2日目の栃煌山戦が重要。この日の朝稽古後、「自分次第。あとは結果を残すだけ」と話した。自分の相撲を取れずに敗れたが、苦境を乗り越えるのも自分次第。簡単に夢は諦めない。

 ▼八角理事長(元横綱・北勝海) 稀勢の里は動きが硬かった。左四つになる前に焦って出てしまった。勝ちたいという気持ちが強く、冷静さがなかった。(綱獲りの)チャンスがなくなったわけじゃない。切り替えていくしかない。

 ▽稀勢の里の隠岐の海戦黒星 13年秋場所3日目は左四つから繰り出した肩透かしが効かず、墓穴を掘って寄り切られた。15年秋場所9日目は左を差して寄ったが、土俵際で突き落とされ逆転負け

続きを表示

この記事のフォト

2016年9月12日のニュース