真央 2季ぶりGP復帰V、表現力アップの裏に筋トレあり

[ 2015年11月8日 05:30 ]

演技を終えた浅田は祈るようなしぐさを見せる

フィギュアスケートGPシリーズ第3戦・中国杯 女子フリー

(11月7日 中国・北京)
 昨季休養した浅田真央(25=中京大)が、苦しみながらGP復帰戦を飾った。女子フリーは3位の125・75点にとどまったが、6日のショートプログラム(SP)との合計197・48点で優勝。完璧なトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)と表現力で他のジャンプのミスをカバーし、自身の日本最多記録を更新するGP通算15勝目、金ヨナ(25、韓国)を超える出場大会8連勝を挙げた。本郷理華(19=邦和スポーツランド)がフリー1位の129・97点をマークし、195・76点で2位に入った。

 完璧な演技を求めて勝負のリンクに戻ってきたからこそ、この日の出来では心から笑えない。得点を待つ間、浅田は両手を合わせ謝罪のポーズ。「フリーに関しては凄く納得していない。優勝できたけど、満足していない」。3―3回転で転倒、3回転ルッツは2回転になり、終盤の3連続ジャンプは1回転のみの大失敗。スタートポジションにつくのが規定の30秒より2秒遅れ、1点の減点もあった。それでも勝てたのは、大技と表現力で圧倒したからだ。

 「蝶々夫人」に乗り、冒頭にトリプルアクセルにアタック。クリーンに着氷すると、ジャッジの加点を1・86点も引き出した。この日朝の練習では2回完璧に決めた後、曲をかけての滑走ではあえて跳ばなかった。浅田にとって珍しい光景だが、「いい感覚できているので、それを失いたくないからでしょう」と佐藤信夫コーチは説明。不調からプログラムに入れられない時期もあったが、浅田も「今後の試合に向けて自信になった」と手応え十分だ。

 大技とともに表現力も浅田を支える。女子フィギュア界ではベテランの25歳。大人の魅力をさらに際立たせるため肉体改造にも取り組んできた。数年前の浅田は力むといかり肩になりがちだったが、14年ソチ五輪を見据えてトレーナーとともに僧帽筋の強化に着手。肩甲骨周辺を支える筋肉を鍛えることで肩のラインが美しくなった。肩回りの可動域も広がり、腕を優雅に使えるようになった。

 現役続行を決断し、僧帽筋のトレーニングも再開。1年の休養があったものの関係者は「それほど筋力が落ちていなかったのが幸いした。マイナスからのスタートにはならなかった」と言う。休養前の13~14年シーズンは国際大会でのフリー演技点の平均は70・2点だった。演技の流れが悪かったこの日でも、全選手中トップの69・60点をマーク。休養しても、浅田へのジャッジの高い評価は不変だった。

 苦しみながら優勝を飾った復帰戦で、課題も明確になった。トリプルアクセル、3―3回転、3回転ルッツと続くフリー序盤。「難易度が高いジャンプが3つ続くのは、大きな壁。3つのリズムをもっともっと体の中に入れていかないといけない」。次戦のNHK杯(27日開幕、長野)で3位以内に入れば、12月のファイナル進出が決まる。「ファイナルへ一歩、踏み出せた」。SPとフリーで完璧な演技をそろえた時、リンクに最高の浅田スマイルが帰ってくる。

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