歴史を変えた五郎丸らに期待すること TL運営改善へ声を上げて

[ 2015年10月23日 08:30 ]

今や一挙手一投足に注目が集まるラグビー日本代表の五郎丸

 微動だにしなかった。放射状に取り囲んだ20人近い記者が、どの方向から質問を飛ばしても、ただ真正面を向き、視線を動かすこともなく答えを発した。「僕自身が一番緊張しているんでね」「平常心で臨むのはたぶん無理なので」「ピッチに立ったら緊張すると思います」。答えもネガティブそのもの。額、こめかみ、首筋を光らせる汗が玉となって流れ落ちようが、拭おうともしない。極限の緊張感に包まれていた、ラグビーW杯初戦の南アフリカ戦2日前、9月17日午後の五郎丸歩の様子だ。

 試合の結果、五郎丸の活躍はご存じの通り。大会を通じてパフォーマンスは素晴らしく、その言動も注目を集めるようになった。南アフリカ戦後のミックスゾーンでは「(勝利は)必然です。ラグビーに奇跡なんてないです」とキッパリ言った。ツイッターで日本のために戦う外国出身選手にも光を当ててほしいと訴え、サモアから選手の選ぶマン・オブ・ザ・マッチを授与されると、相手のことを惜しみなく称えた。最終戦となった米国戦後は「準々決勝、行きたかったですね。目標を達成できなかった悔しさが大きかった」と言い、大粒の涙をこぼした。今や一挙手一投足に注目が集まる、時の人である。

 だからこそ、もう一歩踏み込んでほしいと思ったことがある。13日の帰国会見後の取材で、現在のラグビーブームを維持するために、トップリーグの運営面で何かを変えるべき点があるのではないかと問うたところ「うーん、エディーさんの言葉を借りるなら、コントロールできないことはコントロールできないので。そっちは信じるだけです」と返ってきた。もちろんその通りで、選手にトップリーグの仕組みを変える権限はない。ただ、もう何年も客足が頭打ちのトップリーグを、運営サイド任せにする時期は過ぎたと感じる。

 今こそ、声を上げてほしいと思う。トップリーグだけではなく、日本ラグビー界には変化が必要な箇所がいくつもある。その多くが手つかずのまま、4年後の日本大会を迎える可能性すらある。日本代表をここまで強くしたエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチは、残念ながら「変化を嫌う人」を動かせなかった。間もなくその任から離れる指揮官の意志を継げるのは、五郎丸であり、日本ラグビーの歴史を変えた全ての選手たちだと思う。(阿部 令)

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2015年10月23日のニュース