【オヤジのぴりから調】五輪エンブレム 今こそ「2位じゃダメなんですか?」

[ 2015年9月8日 05:30 ]

 「白紙撤回」は今年のユーキャン新語・流行語大賞の有力候補になるかもしれない。加えて集団的自衛権の行使を認めた安保関連法案が“白紙撤回(廃案)”にでもなれば、ダメ押しとなるが…。

 2020年東京五輪・パラリンピック大会の組織委員会が、佐野研二郎氏がデザインした公式エンブレムを本人の申し入れを理由に取り下げた一件が尾を引く。新国立競技場の建設問題に続く失態に「二つ目の大恥」(米紙ニューヨーク・タイムズ電子版)「ぶざまな成り行きになった」(英BBC電子版)など海外メディアも辛らつだ。

 組織委の責任も重大だと思うが、今回もまるで人ごとで、誰も責任を取ろうとしないのはやはり釈然としない。解体して新組織委を立ち上げるのが筋だが、そういう流れにもなっていない。実に不思議なことだ。

 そんな中で、新たなエンブレムの選考が注目を集める。審査過程の透明性が求められるが、これにも限界があるらしい。デザイン案が公開された時点で第三者が商標登録してしまう可能性が出てくるからだ。なんとも厄介な時代になった。

 島峰藍さんの「桜」のリースをモチーフにした招致時の図案の評判が良い。復活を求める声もずいぶん耳にするが、「招致用は招致委。大会エンブレムは組織委が決めたものでなければならない」という国際オリンピック委員会の規定で採用できないそうだ。

 ならば…と、一つ提案してみたい。時間の無駄を少しでも省くために佐野氏と争ったデザインを再び候補にしてはいかがか。2位、3位の図案がどんなものだったのか気になってしかたがない。そもそものコンペは「佐野氏の図案ありき」を強く疑わせた。原案から2度の修正を経て採用されていた経緯が明らかになったからだ。審査委のメンバーも佐野氏と顔見知りが多かったそうだし、落選の他候補者たちも不信感は拭えないだろう。審査委メンバーを一新した上で、選考が行われたらいい。

 ひとつ思い出した言葉がある。2009年11月13日、事業仕分けで次世代スーパーコンピューター開発の予算削減を決めた際に民主党の蓮舫参院議員が口にした

 「2位じゃダメなんですか?」

 である。

 あのときは物議を醸したが、今こそ生きてくる。実際、次点の図案じゃダメなんでしょうかね。(編集委員 佐藤 雅昭)

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2015年9月8日のニュース