錦織3回戦進出、出方うかがい要所で集中 クレー巧者のレフティー攻略

[ 2015年5月28日 05:30 ]

男子シングルス2回戦でベルッシを下した錦織(AP)

全仏オープン第4日

(5月27日 パリ・ローランギャロス)
 男子シングルス2回戦で第5シードの錦織圭(25=日清食品)が、世界40位のトマス・ベルッシ(27=ブラジル)を7―5、6―4、6―4で下した。前週大会で優勝したレフティーの勢いを受け止め、2年ぶりの3回戦進出を決めた。29日に予定される3回戦では世界48位のベンジャミン・ベッカー(33=ドイツ)と対戦する。

 “勢い”というのは目には見えないが、確実に存在する厄介なものだ。試合前、少なからずベルッシには勢いがあった。

 前週のATP250の大会で3年ぶりにツアー優勝し、全仏に乗り込んできた。しかもクレーコートが大のお気に入り。錦織は「いつも以上に身構えていた」という。その心境が序盤の慎重なテニスにつながった。「最初は自分から打っていくことにまだ自信がなくて、様子を見ながらやっていた」

 ベルッシとしても“勢い”に任せて乱戦に持ち込みたいという思惑があったのだろう。第5シードの錦織を崩そうとガツンガツンと強打を打ち込み、ラリーの中でも先に仕掛けるのはベルッシだった。そうした状況で錦織は普段の攻撃性を抑え、焦って攻め返すことよりも冷静に打ち返すことを選んだ。

 もうひとつ厄介だったのはベルッシが左利きということだった。大会を視察中のデ杯日本代表の植田実監督はこう言った。「プレー中の選手は体が勝手に反応して動く。だけど左利きはボールの軌道も跳ね方も普段対戦する右利きとは変わってくる。左利きだから強いということはないけれど、そこがやりづらい」。野球の投手でも左腕ということが利点になるのと同じ。慣れない部分は試合中にアジャストする必要が出てくる。

 右利きの時は跳ねてから逃げていくサーブが、左利きだと体に食い込んでくるような軌道に変わる。錦織は「左利きだと一番苦労するのはリターン」と言い、第1セットはチャンスの場面で相手の第2サーブをなかなか仕留められなかった。

 とはいえ、キャリア通算勝率は対右利きが・667、対左利きは・659と全く遜色はない。徐々に球筋にも慣れると、堅い守りから鋭いカウンターショットを突き刺した。ベルッシは精神力とスタミナ、そして勢いを徐々にそがれていった。

 「お互いにプレッシャーがかかりながらサービスキープが続いていた」という第1セットは再三チャンスを逃していた錦織だが、第11ゲームでブレークに成功。相手の2度のダブルフォールトでつかんだこの日6本目のブレークポイントで、ついに均衡を破った。

 「あれで余裕が出た。最初のセットが凄く大きかった」。対照的に意気消沈のベルッシは、第2セットの第1ゲームでもダブルフォールトを連発して錦織にブレークを献上。勢いが止まれば世界5位と40位の実力差が確実に現れる。「中盤からはどんどん前に入って打っていけた」と攻勢に転じた錦織は、3セットで試合を終わらせた。

 必要以上にアクセルをふかすことなく、相手の出方をうかがいながら勝機をつかんで2戦連続のストレート勝ち。4大大会初制覇に向け、錦織はここから“勢い”に乗れそうな理想的な序盤戦の勝ち上がりを見せている。

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