前田陽子、プロ9年目の初優勝「伝えたいのは感謝の気持ちだけ」

[ 2014年11月17日 05:30 ]

初優勝に前田は歓喜の涙

女子ゴルフツアー 伊藤園レディース最終日

(11月16日 千葉県長南町 グレートアイランド倶楽部=6639ヤード、パー72)
 苦労がついに報われた。首位に1打差の3位からスタートした前田陽子(29=フリー)が70にまとめ、通算9アンダーの207で並んだ大城さつき(25=フリー)とのプレーオフを制し、プロ9年目のツアー初優勝を飾った。1打差の3位に上田桃子(28=フリー)が入り、首位から出た原江里菜(27=NEC)は16番からの3連続ボギーで2打差の4位に終わった。
【最終R成績】

 プレーオフ2ホール目、大城のパーパットが外れて優勝が決まった。驚きの表情を浮かべた前田だったが、直後に頬を熱いものが伝った。「本当に優勝したんだと思ったら涙が出ていた」。06年のプロ転向から9年目。今季が初のツアー本格参戦とあって「しゃべるのが苦手ですが、伝えたいのは感謝の気持ちだけです」という表彰式のスピーチも初々しかった。

 初の優勝争いでもプレーは堂々としていた。「結果はどうであれ、いい経験になる」。そう割り切って臨むとフェアウエー、グリーンを確実に捉えた。1・5メートルを沈めた8番のバーディーで原を捉えると、堅実にパーを重ねて首位キープ。単独トップで迎えた18番では「トップとは知らなかった」とボギーを叩いたが、これが唯一のミスだった。

 昨年から、482試合連続出場の日本女子プロ協会記録を持ち「鉄女」の異名を持つ今堀りつの指導を受けている。技術だけでなく精神面のアドバイスももらい、15日夜は「5時間戦って勝てば、来年1年プレーできるのよ」とハッパをかけられた。それを意気に感じ、見事に実践した。

 昨年までの5年間は下部ツアーでの出場しかなく、ツアーに出られない間は時給750円で段ボール工場でアルバイトした。その苦労が優勝賞金1800万円となって報われた。賞金ランクは34位に浮上し、最終戦のツアー選手権リコーカップの出場も手に入れた。稼げない時代、けんかをしながらも家計を支えてくれた母・貴子さん(54)に「何かプレゼントを考えたい」と感謝の言葉を口にした。自身のご褒美としては「格好いい外車を買いたい」と胸を張った。

 徳島県小松島市出身。次戦の大王製紙エリエール(20日開幕、香川・エリエールGC)は中学生の時に観戦してプロを目指すきっかけとなった大会だ。段ボール会社の関係で王子製紙「ネピア」とスポンサー契約している前田が、ライバル社のトーナメントで凱旋を果たす。

 ◆前田 陽子(まえだ・ようこ)1984年(昭59)11月26日、徳島県小松島市生まれの29歳。小学6年でゴルフを始め、香川西高を経て、06年にプロ転向。08年に5度目の受験でプロテストに合格した。昨年の予選会で12位となり、今季は初のツアーフル参戦。それまでのレギュラーツアー出場は06年1試合、07年1試合、08年4試合の計6試合だけだった。今季は伊藤園レディースが33試合目の出場。それまでの生涯獲得賞金は1115万8666円で、プロ9年分の稼ぎを今大会だけで上回った。得意クラブはPW。1メートル64、60キロ。

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