“逆転の安藤”本領!「日本のため」滑り4年ぶり世界女王

[ 2011年5月1日 06:00 ]

フィギュアスケートの世界選手権で2度目の優勝を果たし、「がんばろうニッポン」と書かれた日の丸を手に観客の声援に応える安藤美姫

フィギュアスケート世界選手権最終日

(4月30日 ロシア・モスクワ)
 東日本大震災の被災者へ、ミキティスマイルを届けた。女子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)2位の安藤美姫(23=トヨタ自動車)はフリー1位の130・21点で合計195・79点とし、SP1位のバンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナ(20=韓国)を逆転して4年ぶりの優勝を飾った。1年ぶりの実戦復帰だったキム・ヨナは194・50点の2位に終わった。

 “逆転の安藤”が大舞台でも本領を発揮した。取材エリアにいた安藤の元にモロゾフ・コーチが「ミキ!!」と大声を上げて寄ってきた。キム・ヨナが安藤の得点に届かなかったことを耳元で告げると、2人で抱き合って喜んだ。SP0・33点差の2位から、1・29点差の僅差で逆転。4年ぶりの女王返り咲きだった。

 「小さなミスはあったけど、シーズン最後の試合で日本のために滑れたことがうれしかった。結果は神様のご褒美だと思う」

 最初に3回転―2回転ジャンプを確実に決めた。7つのジャンプのうち5つを得点が1・1倍になる後半に組み込むハードなプログラム。3つ目のジャンプは着氷で乱れたが、力強い動きでグリーグの「ピアノ協奏曲」の調べに乗った。高難度のジャンプは控え、大きなミスなくまとめた。2月の4大陸選手権で出した世界歴代2位の134・76点には及ばなかったが、130・21点の高得点。今季ここまで5戦4勝で、全戦1位だったフリーで観衆を魅了した。

 「1人でも多くの人に笑顔になってもらえたらいいな」

 東日本大震災の被災者への思いを込めて滑った。8歳の時に父親を亡くした安藤は家族を失った被災者の気持ちは痛いほど分かる。3月には福岡でチャリティー演技会を開催し、被災地にタオルや食料も送った。3月の東京開催が中止で1カ月延期となり、調整に苦しんだが「震災で大変な思いをしている方に比べれば、試合前の不安なんてちっぽけなこと」と奮起。「自分より日本のことを考えて滑ったことが今までとの大きな違い」と被災者への強い思いがスケートへの大きな力になった。表彰式を終えると「がんばろうニッポン」と書かれた日の丸を手にしてリンクを1周した。

 4年前は2週間前に右かかとを痛めて練習できずに挑み、無心でつかんだ金メダルだった。昨年のバンクーバー五輪は5位に終わったが、今季は常にその時できる最高の演技を心がけてきた。「今回はメダルを狙って努力してきた。昔より少し強い選手になった手応えはあります」。かつては気持ちの波、調子の波が激しかったが、安定した力を手に入れた。4年ぶりの金メダルは安藤の成長の証だった。

 ▼ニコライ・モロゾフ・コーチ 安藤はとても強いスケーター。常に安定した演技ができるから勝てた。彼女は世界のNo・1だ。小さなミスは出ると思っていたので、心配はしていなかった。

 ▼日本スケート連盟・伊東秀仁フィギュア委員長 安藤は自信を持って落ち着いて滑っていた。今季は安定した成績を出している。優勝して本当にうれしく思う。

 ◆安藤 美姫(あんどう・みき)14歳だった02年に女子初の4回転ジャンプに成功。06年トリノ冬季五輪は15位。その後モロゾフ・コーチに師事し、世界選手権で07年に初優勝、09年に3位。昨年のバンクーバー五輪は5位。今季は全日本選手権で3度目の優勝。2月の4大陸選手権で女子4人目の合計200点突破を果たした。トヨタ自動車。1メートル62、50キロ。23歳。愛知県出身。

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