待った4回!“手付き徹底”弟子が守れず

[ 2008年9月16日 06:00 ]

垣添(中央)との4度目の立ち合いも待ったとなり、苦笑いの春日王(右)、行司は木村庄太郎

 大相撲秋場所2日目は15日、両国国技館で行われ、異例の謝罪あいさつで新たなスタートを切った武蔵川新理事長(元横綱・三重ノ海)が、いきなり愛弟子に足を引っ張られた。幕内の垣添―春日王戦で“手付き不十分”などの理由で実に4回も立ち合いがやり直しとなった。これには勝負審判を務めた兄弟子・藤島親方(元大関・武双山)も怒り爆発。手付きの正常化を厳命したばかりの新理事長も、愛弟子への徹底指導を口にするしかなかった。

【取組結果


 会心の相撲で連勝発進を決めても、支度部屋に戻る垣添の顔は浮かなかった。春日王戦で3回目も突っかけるなど場内の雰囲気に水を差したこともあり、マゲを整える際も表情は変わらず、肩は落ちたまま。「良くないですね…。自分が早かった。自分が良くないと思います」と敗者のように視線を落とした。
 場所前日の13日、師匠の武蔵川新理事長が立ち合いの正常化を訴え、審判部と行司に「両手をついていなかった場合は、誰でもいいから止めてほしい」と通達したばかり。初日の協会あいさつで満員のファンに異例の謝罪をし、協会一丸となって難局を乗り切ろうという決意を示した矢先に愛弟子が失態を演じた。
 弟子の裏切り行為に、烈火のごとく怒ったのが、審判員として土俵下で見守った武蔵川部屋の藤島親方だった。取組後、垣添が力水を付ける際に「早い!」と一喝。怒りは1時間経っても収まらず、控室に戻っても「あいつには稽古場で何度も言っている。自分本位で見苦しすぎる。あんまり合わせないなら負けにすればいい」と声を荒らげた。
 手つきの徹底には不満を漏らす力士もいるが、垣添は「相手が(手を)ついてからでないと…。相撲ですから」と言い訳にはしなかった。
 新理事長は評議委員会終了後、垣添の立ち合いについて聞かれると「注意しておく」と迫力ある声で答えた。失った信頼、そして相撲の持つ「美」を取り戻すために厳格さを前面に出す――新理事長のポリシーに揺るぎはないが、まずは愛弟子の徹底指導から始めなければならないようだ。

 ≪手付き徹底に力士ら戸惑い≫13日に通達された「手付き徹底」に戸惑う力士も少なくない。十両のベテラン玉春日は帰途に就く前に、自らの立ち合いのタイミングを行司に確認。この日の取組で4度の立ち合いを行った潮丸も「1度目と4度目の違いが分からない…」と苦笑いだった。通達はこの日初めて東西両支度部屋に張り出されたが、準備期間が短すぎることは否定できない。

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2008年9月16日のニュース