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【コラム】戸塚啓

広島&仙台 仕上がりぐあいは?

[ 2013年2月15日 06:00 ]

仙台との練習試合で“今季初ゴール”を挙げ喜ぶ広島のFW佐藤
Photo By スポニチ

 昨年のJ1優勝を争った2チームが、シーズン開幕をまえに相まみえた。サンフレッチェ広島とベガルタ仙台が、互いのキャンプ地である宮崎で練習試合を行なったのだ。

 2月13日の午後2時にキックオフされた試合には、J1、J2各クラブの関係者も多く詰めかけた。昨年のJ1をけん引した2チームの仕上がりぐあいは、どのチームにとっても気になるのだろう。

 両チームのメンバーは対照的だった。広島が1本目からほぼベストメンバーを組んできたのに対し、仙台は試験的な性格を帯びた11人で最初の45分を迎える。「色々な組み合わせを試したかった」とは仙台の手倉森監督だが、菅井、鎌田、角田らが別メニューで調整している影響もあった。

 お馴染みの3-4-3でのぞんだ広島は、戦術的な成熟度の高さを感じさせた。キャンプ中だけにフィジカルコンディションは万全でないものの、攻撃のスイッチが入った瞬間の連動性は鮮やかだ。「ほとんど選手も変わっていないので、ベースを維持するなかで質を上げていきたい」と、キャプテンの佐藤は話す。森脇が移籍したものの、チームのクオリティは依然として高い。今季から背番号10を背負う高萩の存在感も、このチームへの期待を膨らませる。

 一方の仙台はどうか。

 こちらもベースは固まっている。様々なテストは試行錯誤ではなく、より発展的なトライと理解するべきだ。

 補強は効果的である。石川(新潟)、ヘベルチ、佐々木(G大阪)、和田(東京V)らは、いずれも複数のポジションでプレーできる。豊富な組み合わせを可能とする編成は、ここ数年の躍進を後押しした要因であり、初出場のACLを念頭に置いたものでもある。こちらは関口を失ったが、戦力ダウンの印象はない。

 3人目のブラジル人として獲得したジオゴは、タフでハードなプレースタイルのボランチだ。Jリーグ以上に激しさが問われるACLでは、この男の存在がクローズアップされてくるに違いない。

 ACL出場チームはリーグ戦で苦しむというのが、このところお決まりのパターンである。リーグ戦の合間に組み込まれるACLの6試合は、相当な肉体的負担を強いると聞く。

 待ちうける壁の高さと厚みは、広島も仙台も十分に承知している。アジアで戦うのは初めてとなる仙台も、ACLへ向けたシミュレーションは行なっている。昨年2月にキャンプ地の宮崎からタイへ遠征し、現地入り3日目に試合をしているのだ。ACLをはっきりと意識したスケジュールである。

 リーグ屈指の完成度と地力を持つ2チームは、過密日程をどのように克服していくのか。ACL出場チームが逃れられなかった負の連鎖も、彼らなら克服してみせる気がする。(戸塚啓=スポーツライター)

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