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【コラム】戸塚啓

レッズがACLを制すること

[ 2017年11月22日 14:30 ]

ストレッチするGK西川(左)とFWラファエル・シルバ
Photo By スポニチ

 11月18日に行なわれたACL決勝第1戦で、浦和レッズが敵地から勝点1を持ち帰ってきた。

 JクラブがACL決勝に勝ち残るのは、ガンバが優勝した2007年以来だ。開催国枠ではなくアジアの代表としてクラブW杯に出場する意味でも、レッズに寄せられる期待は大きい。

 もっとも、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督には、そこまでの関心事ではなかったのかもしれない。直前の欧州遠征に、レッズから5人の選手を選んだのだ。2試合連続でスタメンに名を連ねた槙野智章と常連の遠藤航はともかく、GK西川周作を約8か月ぶりに招集し、MF長澤和輝を初めて選び、FW興梠慎三を2年以上ぶりに呼び戻すタイミングとして、11月の欧州遠征がふさわしかったとは思えない。

 西川はこのチームで活動してきたひとりで、興梠もすでにプレースタイルは分かっているだろう。長澤はここ数試合で評価をあげた選手だが、テストをするなら12月のEAFF―E1チャンピオンシップでも遅くはない。

 ブラジルとベルギー相手に力試しをした遠征で、西川と興梠は出場機会を得られなかった。遠藤もピッチに立ったのはごくわずかの時間だった。代表チームとしてトレーニングをするのが大切だとしても、彼らがいなければ成立しない遠征ではなかった。

 代表チームの選手選考は、ハリルホジッチ監督の専権事項だ。それは間違いない。しかし、今回は特別なタイミングだ。代表がクラブより優先されるとしても、クラブの利益は代表に資する。ACLを制してクラブW杯に出場すれば、槙野らの選手がロシアW杯へつながる経験を積める。彼らを代表候補と考えているハリルホジッチ監督にとっても、喜ばしいことだ。

 もう少し広い視点に立ってみる。

 レッズがACLを制すること、クラブW杯に出場することは、Jリーグの他クラブに大きな刺激となる。身近なライバルが特別な体験をすれば、選手なら「次は自分たちも」と考えるものだ。ACLの出場権を、本気で狙っていくチームが増える。Jリーグの競争力が高まり、日本代表を狙う選手のレベルが上がる。

 そうやって考えると、レッズは良く戦ってくれたと思う。日本代表に招集され、その足で敵地リヤドへ飛んだ5人は、とりわけ頑張ってくれたと思う。

 ロシアW杯が近づいてくるなかで、ブラジル、ベルギーと対戦した今回の遠征が重要だったのは間違いない。一方で、ACLは公式戦である。レッズの選手にはACLに専念してもらう決断が下されても、僕自身は納得できるところがあった。

 槙野や遠藤に話を聞くと、レベルの高い試合を経験できるのは嬉しい、といった趣旨の話をしていた。彼ら選手たちの意欲はとても頼もしいが、フィジカル的な負担は大きかっただろう。

 目の前に試合があれば「出たい」と考えるのが選手で、自分から「疲れている」とは言わないものだ。だからこそ、使う側が選手のコンディションをコントロールしなければならない。代表やクラブの利益を追求していきながら、選手たちにロシアW杯を万全の状態で迎えてもらうことを、決して忘れてはならないと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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