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【コラム】戸塚啓

コロナ禍での日本代表

[ 2021年3月24日 21:00 ]

<U-24日本代表練習>シュートを放つ久保(撮影・西海健太郎)
Photo By スポニチ

 日本代表とU―24日本代表に続いて、様々な代表チームが活動を開始しているU―20日本代表候補が22日から24日までトレーニングキャンプを行ない、25日から28日まではU―18日本代表候補と日本高校サッカー選抜が、それぞれトレーニングキャンプを実施する。さらに、フットサルとビーチサッカーの日本代表候補が、25日以降からトレーニングキャンプを行う。

 また、なでしこジャパンは4月8日と11日に、国際親善試合を組んでいる。こちらは東京五輪への強化だ。

 アジアを含めた国際大会は、のきなみ中止となっている。日本高校サッカー選抜が参加予定だった4月のデュッセルドルフ国際ユース大会も、今年は開催されない。

 直近の目標を見つけにくいなかでも活動を進めるのは、強化を停滞させないためだ。とりわけU―18やU―20などの年代別代表は、定期的な活動が大きな意味を持つ。

 同世代の選手たちとトレーニングを積むことで、所属クラブ内とは違う物差しで自身の現在地をはかることができる。「自分は何ができて、何が足りないのか」を、より客観的に理解することができる。レベルアップのモチベーションを刺激する機会となるのだ。

 トレーニングキャンプ実施の意味を見出せる一方で、コロナ禍の難しさは付きまとう。日本代表でも齊藤俊秀コーチから、新型コロナウイルスの陽性反応が認められた。

 選手は所属クラブの指導のもとで、感染対策を行なっている。代表スタッフは協会の管理下で、感染予防と健康管理に務めている。PCR検査も定期的に実施している。それでも感染のリスクを排除できないのが、新型コロナウイルスの恐ろしいところだ。

 齊藤コーチとの濃厚接触者はおらず、代表スタッフと選手たちの陰性が確認できたことから、チームは活動を続けることができた。しかし、陽性反応者が出ることや、それによって活動中止に追い込まれることは、どのチームも想定しておかなければならない。

 日本代表やUー24日本代表が国際試合を戦うことには、様々な意見があるだろう。新型コロナウイルスの感染拡大が止まっていないなかで、今回のように陽性反応者が出たり、万が一に出もクラスターが発生したりしたら、医療提供体制を圧迫してしまう。

 4月8日に開催されるなでしこジャパン対パラグアイ女子代表は、ユアテックスタジアム仙台が舞台となる。宮城県と仙台市は、感染者が急増している。現状では有観客での開催であり、両チームを含めた大会関係者が仙台市を多数訪れることになる。不安を感じる地元の方もいるに違いない。スタジアムの変更が大変なのは分かっているが、感染状況によっては開催場所を変えるなどの措置が必要ではないだろうか。

 海外からチームを招く国際試合に限らず、トレーニングキャンプでも人の流れを作り出すことになる。県境をまたいだ移動も出てくる。

 だとすれば、どのような感染対策をしているのかを、日本サッカー協会は広く一般に知らせていくべきではないだろうか。昨年10月と11月の日本代表欧州遠征は、他競技のモデルにもなる対策がなされたと聞く。実際に欧州各国から集まった選手、日本から現地を訪れたスタッフや関係者から、陽性反応者が出ることはなかった。

 「厚生労働省や保健所、関係当局の方針や行動計画に基づいて」といった決まり文句ではなく、具体的かつ詳細な感染対策を公表することは、スポーツ界だけでなく社会全体の利益につながる。サッカー界対策が、「経済を動かしながら感染を抑える」という難題を解決する一助を提案できたら、素晴らしいことだと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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