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【コラム】戸塚啓

指揮官選び なぜその監督に辿り着いたのか

[ 2018年4月5日 15:00 ]

暫定的に浦和を指揮することになった大槻監督(中央奥)は円陣で指示を出す
Photo By スポニチ

 サッカーの監督という職業は、契約書にサインをした瞬間からクラブを去るカウントダウンが始まる、と言われる。あらかじめ決められた契約期間は、実はあまり意味を成さない。

 J1リーグの浦和レッズが、堀孝史監督を解任した。5試合を終えて2分3敗という結果は、クラブワーストタイだった。試合内容もふるわなかった。結果が出ていないチームとはそういうものだが、同じようなやられ方をしていた。

 今シーズンのJ1リーグは、ロシアW杯の開催によって5月中旬から7月中旬まで約2か月の中断期間がある。それに伴い、ゴールデンウィークの終わりまで週2試合のペースで公式戦を消化していく。チームを立て直すための時間を、十分に確保することはできない。ここまでの流れを断ち切る方法として、浦和は監督交代に踏み切ったのだろう。

 監督交代のタイミングを見極めるのは、いつだって難しい。

 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督にしても、交代させるタイミングはこれまでに何度かあった。しかし、日本サッカー協会は続投を選んだ。続投させるメリットはあり、交代させるデメリットもある。その判断が正しかったかどうかは、W杯の結果で明らかになる。

 浦和に話を戻そう。

 クラブは暫定的に大槻毅監督にチームを託し、初の公式戦となった4日のルヴァンカップで広島と引き分けた。両チームともに直近のリーグ戦からメンバーを入れ替えただけに、チームが変わったと言うのは早い。

 ただ、すぐにメンバーを入れ替えられるのは、トップチームや育成組織で長く仕事をしてきた大槻監督だからこその采配である。内部昇格の人事が持つメリットだ。

 大槻監督に再建を託しつつ、クラブは並行して新監督を選定していくという。新監督の条件として聞こえてくるのは「経験」だが、堀前監督はトップチームの監督経験が豊富だったわけではない。そもそも、2年連続でシーズン中に監督を交代する事態は、フロントの責任を問われてもおかしくないものだ。

 大槻監督のもとでここから成績が好転しても、新監督招へいの考えかたは変えないのだろうか。あるいは、大槻監督のもとでもチームが浮上しなければ、新監督招へいの条件を変えるのだろうか。つまり、すぐにチームを率いることのできることを第一条件として、後任を急いで決定するのだろうか。

 どのような判断を下すとしても、浦和のフロントは次の監督に何を求め、なぜその監督に辿り着いたのかを、はっきりと説明しなければならない。

 個人的な意見を言えば、クラブの哲学を明確にする好機ではないか。浦和の保有戦力が充実しているのは、ここ1、2年に限ったことではない。もっとタイトルを獲っていいはずだと感じるのは、僕だけではないだろう。ファン・サポーターも巻き込んだ一体感を作り出せる監督を選び、数年後の成功を見据えてチームを再構築していくことが、Jリーグを代表するビッグクラブには必要だと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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