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【コラム】戸塚啓

飛び出す選手 復帰する選手

[ 2017年2月3日 15:00 ]

C大阪復帰が決まり、羽田空港に到着した清武
Photo By スポニチ

 飛び出す選手がいて、復帰する選手がいる。

 鹿島アントラーズの柴崎岳が、スペイン2部のテネリフェへ移籍することになった。かつてフェルナンド・レドンドがヨーロッパでの第一歩を記し、レアル・マドリードへステップアップしていったクラブである。テネリフェから飛躍した国際的なプレーヤーは、元アルゼンチン代表ひとりにとどまらない。現在は2部リーグ所属だが、初めてのチャレンジとして悪くないクラブだ。

 契約期間は6月30日までとなっている。2年、3年とまとまった契約を結べば、じっくり腰を据えて適応していける。一方で、短期間でお互いの相性を見極めるという考えかたも成り立つ。クラブと選手のどちらも、そのほうが不要なリスクを抑えることができる。

 欧州への移籍は、片道切符ではない。

 移籍したクラブのサッカーに合わない、監督の信頼を得られない、得意とするポジションで起用されない、といった障害を、長い時間をかけて乗り越えるのは大切だ。しかし、出場できる可能性がより高い違うクラブを探すのも、プロとしての在りかただ。

 テネリフェでプレーを続けたいと思い、やっていけるという手ごたえを柴崎がつかめれば契約更新へ動けばいいし、そうでなければ他クラブへの移籍を検討すればいい。Jリーグに復帰してもいいだろう。それは決して失敗ではない。国内で力を蓄えたうえで、改めてチャレンジをすればいいのだ。そういう意味で、半年という期限は現実的と言える。

 Jリーグに復帰するのは、清武弘嗣だ。欧州の移籍期限ギリギリで、セレッソ大阪への復帰が正式に発表された。

 セビージャでコンスタントに出場機会を得られず、EU圏外枠の問題にも直面する彼の立場は、かなり難しいものとなっていた。

 ブンデスリーガでの実績を考えれば、欧州のマーケットにとどまるのは十分に可能だったはずだ。それだけに、「帰国するのはもったいない」という空気が流れそうだが、Jリーグへ戻ってきたからといって、積み上げてきた実績が削除されるわけではないだろう。日本で健在ぶりをアピールすることも、キャリアアップへの確かな手段となっていくはずだ。

 清武のJリーグ復帰は、12年5月以来となる。日本代表の中核を担う彼の獲得は、今オフ最大の補強と言っていい。セレッソは上位進出の可能性を高め、Jリーグ全体にも好影響を与えるだろう。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督にも、嬉しいニュースに違いない。2017年最初の国際Aマッチは、3月のUAE戦だ。ホームで苦杯をなめた相手と、敵地アルアインで向き合う。

 ここまで日本は勝点10の2位で、UAEは勝点9の4位だ。負ければ立場が入れ替わるし、引き分けでも3位のオーストラリアに抜かれるかもしれない。

 それだけに、清武のセレッソ復帰は指揮官に頼もしいだろう。セレッソの攻撃を牽引することで、ゲーム体力やゲーム勘が磨かれていく。日本代表で戦う準備が整うからだ。

 それぞれの決断が正しかったのかどうかは、結果で評価される。ただ、他でもない自分のキャリアである。自らの決断に自信を持ってほしいし、必要以上に縛られる必要もない、と思うのだ。キャリアを前へ進めませるためなら、いくらでも修正をしていいのである。(戸塚啓=スポーツライター)

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