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【コラム】戸塚啓

課題山積のU-23日本代表

[ 2012年7月20日 06:00 ]

<日本・ベラルーシ>後半36分、ゴールを決め喜ぶ杉本(左)と東
Photo By スポニチ

 7月18日に行なわれたベルルーシ戦に、U-23日本代表の関塚隆監督は何を求めたのだろう?

 普通に考えれば、スペイン戦を見据えた最終確認の機会である。

 ケガ明けの吉田麻也のコンディションは、実戦に耐えうるレベルまで回復しているのか。彼を含めた最終ラインのコンビネーションはどうなのか。11日のU-23ニュージーランド戦に合流できなかった酒井高と宇佐美は、トゥーロン国際で見せたチームへのフィット感を維持しているのか。

 確認すべき項目を塗り潰すには、それなりの時間が必要だ。ハーフタイムを挟んで少なくとも15分、前後半合計で60分から70分前後は、先発の11人にプレーさせたい。前半だけでメンバーを入れ替えたら、前半の修正ポイントがそのまま残ってしまうからだ。また、チームの課題と言われてきたゲームの入り方を、後半開始にも経験させておきたい。そのためにも、先発の11人にある程度の時間を与えるべきである。

 関塚監督の考えは違った。後半のスタートから、6人の控え選手を投入したのだ。後半が15分を過ぎたタイミングで、指揮官はさらに3人の控え選手を投入した。先発でピッチに残っているのは、酒井高と宇佐美だけとなった。できるだけ多くの選手に実戦経験を積ませることへ、ゲームの目的は変わっていった。

 そうかと思えば、権田に変わったのが林なのである。第2GKの安藤ではなく、バックアップメンバーの林が起用されたのだ。

 安藤ではなく林だった理由を推測すれば、先のニュージーランド戦に出場しなかった林を起用し、DF陣とのコンビネーションを確認しておきたいという意図が浮かんでくる。トゥーロン国際で3試合に出場した安藤は、周囲との連携において林をリードしている。

 権田に万が一のことがあった場合、林はメンバー入りしてスタメンで起用される。安藤はあくまで第2GKの位置付けだが、大会突入後に彼が必要となる可能性もゼロではない。吉田らを含めた最終ラインとのコンビを最初に確認するのは、林ではなく安藤であるべきだった。21日のメキシコ戦には、安藤も出場するだろうが……。

 関塚監督にとってのベラルーシ戦は、最初から〈数多くの選手を起用する機会〉という位置付けだったと考えられる。しかし、本番は目前に迫っている。この試合で先発組を最終チェックし、21日のメキシコ戦で多くの選手を使ったほうが、スペイン戦への準備として妥当だったと僕は思う。

 戦術的な部分で気になるのは、攻撃時にニアサイドを使えていないことだ。

 ベラルーシ戦の16分のシーンが分かりやすい。右サイドバック酒井宏がグラウンダーのクロスをニアサイドへ供給したが、ゴール前へ走り込んだ大津、山口、宇佐美の3人は、中央やファーポストでラストパスを受けようとしていた。

 単純なクロスでは跳ね返されるだけに、狙いどころをどこへ定めるのかが大切になってくる。酒井宏のクロスは大きな強みになるはずだが、柏レイソルで見せてきたようなアシストの面影が、このチームでは薄い。

 先のニュージーランド戦後、関塚監督は「ゴール前への入り方をこれから詰めていきたい」と話していたが、ベラルーシ戦を見る限りは改善の兆しがない。ニアサイドを狙おうとする選手は、試合を通じて見当たらなかった。

 どんなチームでも課題はある。チームが活動している限り、課題は決してなくなるものではない。それにしても、U-23日本代表は課題が山積している。(戸塚啓=スポーツライター)

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