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銃撃戦で死者…岡田ジャパン“軟禁状態”

[ 2010年6月8日 06:00 ]

旧黒人居住区ソウェトで、ブラジル代表を乗せたバスを迎える大勢の地元ファン

 サッカーのW杯開幕を11日に控えた南アフリカのヨハネスブルク近郊にある旧黒人居住区ソウェトで5日、銃撃戦が発生して警官1人が死亡した。ヨハネスブルクやその近郊にはイングランドなど多数の出場国がベースキャンプを設置。同国南部のジョージで合宿をスタートさせた日本代表イレブンにも外出禁止令が出されるなど、以前から指摘されている治安への懸念があらためてクローズアップされる事態となった。

 銃撃戦の舞台となったのは旧黒人居住区ソウェト。警察当局によれば、5台ほどの車に分乗した武装集団が幹線道路を通行中の現金輸送車2台を襲撃。現金を奪って逃走し、追跡した警官隊と撃ち合いになったという。警官1人が死亡して別の1人も負傷。犯人は逃走したが、別の場所で発生した2度目の銃撃戦で容疑者3人が逮捕され、拳銃など8丁が押収された。残りの犯人数人は依然逃走中とみられている。
 「世界最悪の犯罪都市」とも言われるヨハネスブルク。南アフリカ全体でも09年3月までの1年間で1日平均約50人が殺害されたという衝撃的な統計が残る。警察はW杯に向けて4万4000人を新たに採用。安全確保に力を入れ、国際社会へ治安改善をアピールしようと努力を続けてきた。
 W杯開幕を6日後に控え、そういう状況で発生した凶悪事件。ソウェト近くには開幕戦と決勝戦が行われるサッカー・シティー・スタジアムもあり、ヨハネスブルク周辺には出場国の宿舎も集中する。選手や観戦のために訪れる国外ファンの不安増大は避けられない。地元メディアによれば、事態を重く見たセレ警視総監が自ら捜査に乗り出す意向を示したという。
 また韓国メディアによれば、ヨハネスブルクでは同国の報道関係者に犯罪の被害が多発しているという。4日には制作会社スタッフがビルのトイレで3人組に襲われ、パスポートや現金1500ドル(約14万円)を奪われたほか、テレビ局SBS関係者が信号待ちで車を停車した際にいきなり車の窓ガラスを割られたという。車を急発進させて「スマッシュ&グラブ」と呼ばれる強盗こそ未遂に終わったものの、相次ぐ事件に韓国政府は素早く反応。東亜日報によれば、外交通商省が現地への職員派遣を増員。W杯観戦で訪れる国民の安全確保に向け、韓国の1次リーグ試合会場となるブルームフォンテーンやポートエリザベスに臨時領事館を置くという。
 ムテトゥワ警察相が最近議会に提出した答弁書では、今年3月までの2年間に警察が紛失した拳銃など銃器が5362丁に上ることが判明。ここ数日に限っても試合会場の1つでもあるケープタウンで4歳の子供が首を撃たれるなど銃撃事件が続発している。日常生活で銃が使用される犯罪とは縁がない日本だけに、代表メンバーと現地を訪れるファンには一層の注意が求められる事態。平和の祭典であるはずの世界的ビッグイベントに緊迫感が高まってきた。
 ▽ソウェト アパルトヘイト(人種隔離)政策時代に黒人解放闘争の拠点となった街で、今も黒人貧困層が多く暮らす。76年6月16日の「ソウェト蜂起」では黒人の中高生ら約1万人のデモに警官隊が発砲。約300人が死亡した。3日にブラジル代表が練習を公開し、4日にはW杯の優勝トロフィーが公開された。

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2010年6月8日のニュース