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W杯開幕直前に急浮上した「テロ脅威論」

[ 2010年6月3日 15:07 ]

サッカーシティー競技場の試合で警備にあたる警察官=5月22日、ヨハネスブルク

 11日のワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の開幕まで4日であと1週間。警察がW杯の警備に警官4万4千人を専従させる態勢を敷くなど防犯対策に力を注ぐ中、開幕直前になって「テロ脅威論」が急浮上している。

 「W杯開催が決まった2004年以降、わが国は米英などの治安当局や情報機関と緊密に連携を取ってきた。テロの脅威はない」。5月31日、ムテトゥワ南ア警察相は記者団に語り、メディアなどの間で高まるテロ脅威論を否定した。

 南アは治安の悪さで知られるが、政府当局者はこれまで、同国が国際政治の場で中立的な立場を取っていることや、国内にイスラム過激派関連の組織がないことからテロが起きる可能性は低いと主張。メディアでも以前はテロの脅威を指摘する論調は目立っていなかった。

 しかし5月中旬、イラクの治安当局が拘束した国際テロ組織アルカイダ系武装勢力のメンバーが「W杯でデンマークとオランダ(の代表チーム)への攻撃を検討していた」と語ったと報じられ、状況が一変した。

 武装勢力はその後、攻撃計画について「完全なうそ」とする声明を発表。イラクに派遣された南アの調査団も信ぴょう性を否定したが、米国務省は5月下旬、南アへの旅行者に「テロの危険性が高まっている」と警告。地元有力紙も「テロ発生の確率は80%」との専門家の発言を1面で大きく報じた。

 南アの警察や軍、情報機関は5月下旬、首都プレトリアに「国家共同作戦センター」を設置。W杯期間中、各国代表や競技場周辺の警備を24時間態勢で行う構えだ。

 安全保障研究所(プレトリア)のテロ専門家、アンネリ・ボタ上級研究員は「過去のW杯でも過激派によるテロ計画が浮上した。W杯では常にテロ発生の可能性があることを肝に銘じるべきだ」と話した。(共同)

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2010年6月3日のニュース