365日 あの頃ヒット曲ランキング 9月

【1983年9月】想い出がいっぱい/「みゆき」でヒット 百恵元プロデューサーが仕掛け人

[ 2011年9月16日 06:00 ]

 ★83年9月ランキング★
1 禁区/中森明菜
2 キャッツ・アイ/杏里
3 ボヘミアン/葛城ユキ
4 家路/岩崎宏美
5 想い出がいっぱい/H2O
6 ガラスの林檎、SWEET MEMORIES/松田聖子
7 さらば・・夏/田原俊彦
8 メリーアン/アルフィー
9 UNバランス/河合奈保子
10 ダンデライオン/松任谷由実
注目気まぐれONE WAY BOY/The Good―Bye
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【想い出がいっぱい/H2O】

 1曲のヒットが、高校時代から続いた友人は袂を分かつことになった。

 長野県上田市出身の赤塩正樹、中沢堅司の2人組「H20」が歌った5枚目のシングル「想い出がいっぱい」。フジテレビのアニメ「みゆき」のエンディングテーマは、レコード売り上げ43万枚を記録。売れっ子になった2人は、テレビの歌番組に四六時中出演することになり、無名だった青年を一躍有名人にした。

 2人のハーモニーの微妙なズレが逆に独特の魅力だった。デビュー曲で薬師丸ひろ子主演の映画「翔んだカップル」の挿入歌を歌うという幸先のいいスタート。作詞を赤塩が、作曲を中沢が担当し、レコード会社としても「自分たちで曲を作れるデュオ」として積極的に売り出しを図った。

 しかし、業界内の評価とは裏腹にヒットチャートの上位に彼らの名前はなかなか出てこなかった。メジャーデビューから4年目。そろそろ代表曲が欲しいと思っていた矢先、アニメ番組の制作もしていたレコード会社が「みゆき」のテーマソングを「H20」に任せてみたらという声が上がり、曲作りに入った。

 ところが、なかなか納得できるものが出来上がらず思案に暮れていたところ、担当プロデューサーが交代した。かつて山口百恵のプロデュースをした人物は「一度プロの作詞家、作曲家の作ったものを歌って勉強してみては」と提案。百恵のヒット曲を手掛けてきた阿木燿子に作詞を、渡辺徹の「約束」などヒット曲を数多く作った鈴木キサブローに作曲を依頼。結果は彼らに一番足りなかったヒット、という答えで返ってきた。

 「大人の階段登る 君はまだシンデレラさ」。サビの部分の詞は、H2Oの辞書にはないようなフレーズであり、メロディーもスローテンポながら作品に合ったものでレベルの高さを感じさせた。

 問題は次回作。連続ヒットを周囲は期待した。しかし、「想い出がいっぱい」を超えるものを、と意識すればするほど空回りし、2人の仲も険悪になっていった。

 ついに85年に解散。中沢は今でも歌手活動をしているが一時は「想い出…」を封印。過去との決別を図ったが、ある時中学校の教室から「想い出…」を合唱している声が聞こえた。

 「年齢それぞれの『想い出…』があっていいんじゃないか」。そう思うようになって、ようやくためらわず歌えるようになったという。

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