だれにでも平等に訪れる生と死 有名人の訃報に接して、自分の人生の中身を改めて考えた

[ 2023年4月11日 17:36 ]

愛猫・銀次郎の可愛い寝顔 (写真提供・谷口キヨコ)
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 【谷口キヨコのごきげん!? SOLOライフ】近ごろ同世代の友達とこんな話をよくします。「最近、有名人さん、めちゃ亡くなるよねぇ」「ほんまほんま!最近めっちゃ多いよね」。私もその意見には激しく同意で、ほんまにそう思います。

 でも…ちょっと待って。ほんまにそうなんかな…。ほんまに有名人の死が最近、特に多いのか…。そうではないはず。10年前も20年前も有名人はそれなりの数、毎年亡くなっていたはず。ただ自分に、自分たちの世代に大きく影響を与えた方たちの死が最近多いということではないのでしょうか。だから、「最近有名人さん、めちゃ亡くなるよね」という言葉になっちゃうのでは、と。

 子供時代に影響を受けた人なら何十歳も年上の方が多いだろう。でも、多感な青春時代や20代には、もう少し身近で、でも強烈に影響を受けた人たちは5歳から20歳上ぐらいの人たちが多いように思います。つまり、その人たちもまだ若くイケイケで、もっと上の世代からは理解されないけど、そのヒーローたちの言いたいこと、やりたいことは自分たちにはわかる! みたいな、そんな一体感にヒーローも自分達も包まれていたような気がするのです。世間に認めてもらえない未熟な自分に代わって社会に物申してくれているような…。

 そんな年頃を過ぎても、もちろん彼らは気になる存在で、その憧れの人たちが老齢になり亡くなってきた、と言うことなのでしょう。自分たち世代の気になる人が亡くなる年齢になってきた。だから、『最近亡くなる人が多い』と感じるのかもしれません。

 坂本龍一さんが3月28日に亡くなられました。その前(1月11日)には高橋幸宏さんも亡くなられています。私にとってYMOは好きとか嫌いとかを越えた存在、無条件にかっこよく思えたのです。「あんな音楽やる人が東京には、いはるんや…。想像もつかへんな、かっこええな」。本気で思っていました。

 その3人もいつのまにか70代になり、そして2人がこの世から旅立たれました。ご冥福をお祈りすることしか、私にはできることがありません。あんなに楽しませてもらったのに…。それだけです。

 YMOのお三方はYMOだけに、そのスピリッツを生かして最新のテクノロジーを駆使し、老齢になってもこれまでとは違う革新的な何かで年齢や病気を越えていく存在になるんじゃないか、もしかしたらもうなってるんじゃないか…。うっすら期待していた私のむちゃぶりな夢は儚(はかな)く消えたのです。YMOも人間やったんやなぁ、と。

 私にどんなに大きな影響を与えた人も、やはり私と同じ人間でいつかは死んでいく。これは当然で誰でもわかっていることなのですが、高橋さんと坂本さんの死は私にとって大きな意味を持つことです。『生と死は誰にでも平等にやってくる』。それを音楽と生きざまで教えてくれた、と感じるからです。

 憧れや尊敬や、次元が違う! と思っていた人も同じように亡くなっていく。生まれることと死んでいくことの事実は誰にとっても同じこと。だからこそ、その中身をどうするかは自分に関わる人生の最重要課題であり、それがその人の幸せに関わると思います。それぞれが与えられた環境が全く違っても、それは中身を形作っていく上の一要素でしかありません。『人は死ぬ』。憧れの彼らが亡くなることによって、身近な人が亡くなることよりも、私にとっては、より自分の人生の中身について見つめなおすきっかけをつくってくれたことになりました。別次元の憧れの人だからこそ、少し距離感があるからこそ、その死を悲しむだけではなく、これからの世界や自分のことを考えるきっかけをくれたのです。

 あの頃も、そして亡くなった今も、また細野晴臣さんのこれからの生きざまも、私はあなたたちの影響を受け続けているのですね。

 ◇谷口 キヨコ(たにぐち・きよこ)兵庫県出身。タレント、DJ。リスナーに元気を届けることをメインに、ごきげんに毎日を過ごすことが目標。多くの番組を抱えながら大学院で学び法学(国際法)と文学(哲学)修士。18年4月から京都産業大学現代社会学部の客員教授も務める。

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