「どうする家康」母子再会の舞台裏“元康の暗転”浮き彫りのカメラワーク 松潤&松嶋菜々子に演出「流石」

[ 2023年1月24日 11:00 ]

大河ドラマ「どうする家康」第3話。愛息・松平元康(松平元康)と16年ぶりの再会を果たした於大の方(松嶋菜々子)だったが…(C)NHK
Photo By 提供写真

 嵐の松本潤(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は今月22日、第3回が放送され、主人公・松平元康(のちの徳川家康)が生き別れた母・於大の方と16年ぶりの再会を果たした。於大役は21年ぶりの大河に挑む女優の松嶋菜々子(49)。チーフ演出の村橋直樹監督に撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどのヒット作を生み続ける古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河“初出演”にして初主演となる。

 第3回は「三河平定戦」。故郷の三河・岡崎へ戻った松平元康(松本潤)は、打倒・織田信長(岡田准一)を決意するが、弱小の松平軍は全く歯が立たない。一方、今川氏真(溝端淳平)は援軍をよこさず、本多忠勝(山田裕貴)らは織田に寝返るべきだと言い始め、駿河・駿府に瀬名(有村架純)を残す元康は今川を裏切れないと悩む。そんな中、伯父の水野信元(寺島進)が岡崎城に“ある人”を連れて来る。それは16年前に生き別れた元康の母・於大の方(松嶋菜々子)だった…という展開。

 於大は久松長家(リリー・フランキー)と再婚している。

 元康「母上…」

 於大「ご立派になられて」

 2人きりの時間。

 於大「変わっておらぬ。母はここが好きでありました。昨日のことのように覚えています。この城に嫁いだ日のこと、小さなそなたを、この手で抱いた日のこと」

 元康「(於大の手を握り)元康、母上のことを、心の中でずっと、お慕いしておりました」

 於大「母も、そなたを思わぬ日はありませんでした」

 元康「母上…」

 於大「(抱擁し、耳元で)今川と手をお切りなさい。今川はもうおしまいです」

 元康「母上…」

 於大「そなたは、信長様には勝てません。(部屋の端から中央へ、白湯を飲む)信長様は松平と対等に結び、三河をそなたに任せてくださると、そう仰せです。この上ないありがたいお話でございましょう」

 元康「母上」

 於大「母も、そなたをそばで支えましょう」

 元康「(於大に近づき)母上!私の妻は、今川御一門衆であり、駿府には今も、私の妻と子どもがおります」

 於大「それが…それが何だというのです」

 元康「(膝をつき)私が今川を裏切れば、妻と子はどうなるのか」

 於大「それが何だというのです!つまらぬことです」

 元康「…何ですと」

 於大「そなたの父上は、かつて尾張におったそなたを見捨てました。恨んでおいでか。わたくしは、たいそう立派なご判断であったと思います。主君たる者、家臣と国のためならば己の妻や子ごとき平気で打ち捨てなされ!」

 元康「…出ていかれよ。今すぐ出ていかれよ。(立ち上がり)出て行け!」

 於大「(立ち去り際)そなたを助けている吉良義昭殿を攻め、所領を切り取られよ。それが信長様への返事になる」

 元康「わしの敵は水野じゃ!信長じゃ!わしは今川の家臣じゃあ!」

 村橋監督は「『今川と手をお切りなさい』という言葉を契機に、涙の再会から暗転していく元康の感情の落差を、視聴者の皆さんに追体験してもらえるように撮りたいな、と脚本を読んだ時に思いました。まず、その決定的な言葉を言われた瞬間の元康を見せて、その時は於大の方の表情は見せず、元康が恐る恐る於大の方を見ると、母の表情は先ほどまでの慈愛に満ちた表情から悍ましく変わっている…という見せ方ができないかと考えて、抱き合い→耳元で信じがたい言葉を聞き→体を離していく、というお芝居の形をお二人には提案しました」とプランニング。

 「その空気感が残るよう」、カメラワークはワンカット。「2人が体を離して於大の表情が見えた瞬間に、少しでもブルっとしてもらえたなら、うれしいです」と振り返ったが、SNS上には「大河ドラマ主演経験者による貫禄の演技」「優しい母上からの松嶋菜々子さんの演技の振り幅に圧倒されました!」「迫力のお芝居だった。今川を裏切れとささやく顔、怖かった」などの声が続出。演出と2人の演技が見事にハマった。

 一連のシーンは台本上、台詞の応酬だが、空間を広く使う映像に仕上がったのが印象的。「十数年ぶりに我が子を見た時、岡崎が大好きだったと述懐する時、於大の方にとって、それはそれでウソでないように見えないと、暗転する時の落差も生まれません。ですので、好きだった場所としての岡崎城の空間を見せたり、悪魔の一言を告げた後、そのまま近くで会話をするのではなく、距離を離して白湯を入れながら会話をする。於大の気持ちとしては少し離れたい、目を合わせていられないのではないか、というようなステージングをしています」と狙いを明かした。

 「そういう『形から入った提案』だったので、松本さんと松嶋さんにとってやりづらい面もあるかな、と思ってリハーサルしましたが、流石、様々な作品で様々な関係を演じてこられた2人だけあって、『こっちはこうするので、そっちはこういう感じですかね』といったやり取りで、お二人の中で調整し合って、すんなりと演じていただけました。演出が間に入る必要がなく、楽をさせていただいております(笑)」。4回目の共演となった2人のコンビネーションに感嘆、感謝を表した。

続きを表示

2023年1月24日のニュース