蝶花楼桃花 「笑点」で感じた「瞬発力」の重要性 「勉強になりました」

[ 2022年9月21日 08:00 ]

「笑点」出演などについて語った蝶花楼桃花    
Photo By スポニチ

 【牧 元一の孤人焦点】今月4日放送の日本テレビ「笑点」出演で話題を呼んだ落語家・蝶花楼桃花がインタビューに応じた。

 「とても勉強になりました。収録の日は怖くてドキドキしていたので、今は、ホッとしているというのが1番です」

 1966年にスタートした「笑点」。56年に及ぶ番組の歴史の中で、レギュラー大喜利に女性落語家が回答者として出演するのは初めてだった。

 「直前にスタッフさんに『女性は初めてなので』と言われて『えー!?』と驚きました。ただでさえ緊張しているのに、そこにまたプレッシャーが乗っかった感じで大変でしたけど、ありがたかったです」

 今回は休養中の三遊亭円楽の代役。以前に出演した若手対抗大喜利によってレギュラー大喜利出演の権利を獲得していた。

 収録場所は東京・後楽園ホール。本番では三遊亭小遊三と林家たい平の間に座った。

 「座ったら、緊張し過ぎてチカチカしているというか、ちゃんと見られないというか…。いつも寄席ではお客さまのお顔を見てしゃべってるんですけど、あの時は誰がどこにいるのか何がどこにあるのか全く分からないような状態でした。事前にスタッフさんから『女性初なので、しっかりした回答をお願いします』とハードルを上げられていたので、地上波で見てくださるお客さまにも受け入れてもらえるような回答をしようと思ってました」

 最初の問題は「バレました」で始まる5・7・5の川柳。「バレました 政治と宗教 つながりが」と答え、初回答ながら座布団1枚。続く問題「特定の人だけの祭り」では、「政治家が博多に集まってするお祭りです」と答え、司会の春風亭昇太が「どんな祭り?」と尋ねると「博多そんたく」。見事に2枚目の座布団を獲得した。

 「『バレました』の時に『お~ッ』という反応があって、座布団をもらえたので、ホッとしました。それで、政治のことを言いたいと思って『博多そんたく』を出しました」

 初挑戦で座布団2枚は上々の出来。放送終了後、ネット上には「レギュラーになってほしい」との声も散見された。

 「いえいえ、とんでもないことです。あのスピード感にはゾッとします。師匠たちはみんな問題が出るとすぐに手を上げます。私は、ムリムリ、ヤバいヤバいと思いながらニコニコしつつ、ワーッと考えてました。師匠たちは自分のキャラを守った答えを即座に考えることができる。『大喜利脳』というか、大喜利のネタを考える脳みそが凄く発達しているんじゃないかと思います。あの日、私は頭を回転させ過ぎて興奮状態で夜も眠れないほどでした。でも、また私に何かできることがあるとするのなら、一生懸命にやりたいという気持ちはあります」

 今年3月に真打ちに昇進し、「春風亭ぴっかり☆」から改名。7月21日から30日まで、東京・浅草演芸ホールの昼の部で主任(トリ)を務めた。真打ち昇進後4カ月での初トリは、落語協会が法人化された1977年以降、春風亭一之輔の5カ月を上回り、史上最速の快挙だった。

 「10日間連続でトリを務めるのは大変なことでした。寄席のお客さまは私を見に来る方々ばかりじゃありません。その方々に納得していただくことを常にやらなくちゃいけない。日によってお客さまの層も違うから、それによってネタの選び方も変えなくちゃいけない。10日間の中でうまくいった日もあったけど、めちゃくちゃすべった日もありました。これを掛け持ちでやってる師匠たちは凄いと思いましたし、自分もこれをずっとやらせてもらえる位置に行かなきゃいけないと思いました」

 真打ち昇進から約半年。寄席のトリや「笑点」などで実績を挙げた半面、課題も見えたようだ。

 「まずはネタ数をもっと増やさなきゃいけない。それから、笑点でも感じたことですけど、もっと瞬発力を磨かなきゃいけない。落語家は、瞬発力、適応力に尽きます。常々やり続けること、走り続けることが大事だと思います。これから、みっともないこともいっぱいあると思いますけど、そんな部分を含めて成長を見ていただければ」

 初トリと笑点で既に演芸史と放送史にその名を刻んだ新進噺家が全盛期を迎えるのはこれからだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

続きを表示

2022年9月21日のニュース