佐野浅夫さん96歳の大往生 “泣き虫黄門さま”として親しまれ…2000年に21歳年下の女性と再婚

[ 2022年7月4日 13:11 ]

佐野浅夫さん
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 TBSの時代劇ドラマ「水戸黄門」の3代目黄門さまなどで知られる俳優の佐野浅夫さんが6月28日午後9時59分、老衰のため京都市内の自宅で亡くなった。96歳だった。横浜市出身。童話の朗読や創作でも活躍。2000年2月に21歳年下の女性と再婚して話題を呼んだ。

 1993年から2000年まで“世直しの旅”で全国を回った佐野黄門。初代東野英治郎、2代目西村晃とは一味違った庶民的で慈悲深いご老公としてお茶の間に親しまれた佐野さんが静かに旅立った。96歳の大往生だ。06年、テレビ朝日「名奉行!大岡越前」への出演を最後に表舞台から去り、静かに余生を過ごしていた。

 日大芸術学部在学中の44年に劇団苦楽座に入団。45年3月公開の東宝「後に続くを信ず」で映画初出演。同年8月に大学を中退。苦楽座は中国地方を慰問する移動演劇「桜隊」に改称したが、佐野さんは特攻隊に応召し、劇団を離れた。

 丸山定夫、園井恵子、仲みどりら桜隊のメンバーは45年8月6日、広島に投下された原爆の被害に遭い、佐野さんは仲間を失うというつらい経験をしている。「自分だけが生き残ったことが後ろめたかった」と、その後は沈黙を守り続けたが、「仲間を知る人がいなくなった今こそ」と、07年8月6日に東京都目黒区の五百羅漢寺で62年間の沈黙を破り、仲間たちへの思いを語り、追悼した。

 終戦から5年後の50年には劇団民藝の結成に参加。71年に下條正巳、鈴木瑞穂(94)らとともに退団し、活動の場を舞台から映画やテレビに移した。映画は「きけわだつみの声」(50年)「真空地帯」(53年)「野火」(59年)「けんかえれじい」(66年)などに出演。とりわけ、熊井啓監督作品の常連となり、「帝銀事件・死刑囚」(64年)「日本列島」(65年)「地の群れ」(70年)などで存在感を示した。

 ドラマ出演も多く、68年「肝っ玉かあさん」や72年「おやじ山脈」(ともにTBS)などで頑固で苦労人の父親役を公演。NHK大河ドラマも「天と地と」(69年)「勝海舟」(74年)「風と雲と虹と」(76年)「獅子の時代」(80年)などに出演した。

 TBS「水戸黄門」には75年の第6部から数々の役どころで出演していたが、93年の第22部から水戸光圀役で登場。246回にわたって黄門さんを演じた。庶民的で優しい“泣き虫黄門さま”として親しまれた。

 54年11月にNHKラジオ第2放送でスタートし、放送中の幼児向け朗読番組「お話でてこい」では4000回を超える朗読をこなし、創作童話「せん爺さんの太鼓」などの著書でも知られた。

 98年に先妻の英子夫人に先立たれ、芸能活動を休止。00年2月に21歳年下の育子夫人と再婚して話題を呼んだ。「水戸黄門」シリーズで2代目の助さん、5代目の黄門さまを演じた里見浩太朗(85)は又従弟に当たる。(一部敬称略)

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