叡王戦第5局 藤井3冠がプロ棋士全てに与えた「感動、畏怖、恐れ」

[ 2021年9月14日 05:30 ]

第6期叡王戦5番勝負最終第5局   藤井聡太―豊島将之 ( 2021年9月13日    東京・将棋会館 )

<叡王戦 豊島・藤井>報道陣の質問に答える藤井聡太(撮影・島崎忠彦)
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 スポニチ本紙観戦記者の関口武史指導棋士五段が叡王戦第5局を解説した。「プロ棋士全てに感動、畏怖と恐れを与えた」と藤井の指し回しを絶賛し、年度内6冠の可能性についても「否定できる材料はない」とした。

 まず指摘したのが右銀の活用だった。元々3九にいた銀が4七の位置では王の「守り」に、5六では「中央制圧」に。そして65手目[先]6七銀引(第1図)とすることで金銀3枚を連結させ、「自陣を引き締めた」。状況に応じて役目を自在に変えていくさまを「攻めと受け、まるでサッカーの卓越したボランチのよう」と表現する。

 代表的な陣形、金矢倉とは7七金と7八銀が今回逆で、悪形と教わるだけに見えづらい[先]6七銀引。その効果で、「大活躍できる下地をつくった」と7七金に活が入った。矢倉戦では本来王側にあって守護する要の駒だが、7七から6六、5六、4五、5四、4三と敵陣へドリブルしていく。最後は豊島を投了へと導く、攻めの要となり「守り駒から攻め駒へと活用していく柔軟性。根が生えているというか、(指し手の)全てがつながっている。分厚いなあと思います」と感嘆した。

 藤井には来春までの年度内に最大6冠の可能性がある。来月開幕の竜王戦で挑むのは豊島で王将戦、棋王戦は渡辺明3冠。ともにタイトル戦での対戦成績は藤井の2勝0敗であることから、「奪取する好材料がそろっている」。

 そこで思い出すのが渡辺が以前発した「(藤井に)勝つプランが見えない」との言葉。今回経験の少ない相掛かりの力戦形になったが、腕力勝負でも豊島相手に力を発揮した。「切り崩されるイメージが見えてこない」と関口氏。10代にして死角を消滅させた完成度の高さを称えた。

 藤井に渡辺、豊島、そして永瀬拓矢王座(29)が全8冠のタイトルホルダーで「4強」と言われる。藤井は棋聖戦で渡辺に勝利。王位戦、叡王戦と豊島を連破した。

 平成時代に羽生は22歳で第一人者となった。令和になって、藤井は19歳で最多タイトルホルダーに並び立った。年度内、藤井の3冠はもう減ることがなく、どこまで増やせるかが焦点。棋界の地殻変動は「藤井1強」へと進む。それが共通認識だが、問題はそれがどれだけ早いか遅いか。その勢力図が年度末、激変している可能性はある。

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