王将戦今期3度目「相矢倉」 広瀬八段“誘導”に渡辺王将“反発”

[ 2020年3月6日 05:30 ]

第69期大阪王将杯王将戦 7番勝負第5局第1日 ( 2020年3月5日    大阪市中央区・KKRホテル大阪 )

盤上を見つめる渡辺王将(左)と広瀬八段(撮影・坂田 高浩)
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 渡辺明王将(35)2勝、広瀬章人八段(33)2勝で迎えた第5局は後手の広瀬が午後6時、60手目を封じて指し掛けとなった。戦型はシリーズ3度目の相矢倉。経験値の少ない広瀬が研究成果を示す戦いへ誘導し、渡辺が反発した局面で封じ手になった。対局は6日午前9時に再開する。

 昼食休憩前から渡辺が動いた。40手目△9四歩(第1図)に▲3五歩。休憩を挟んで45手目▲1五歩に△同歩▲同香と走り、△1三歩と広瀬が収めても▲2四歩からの継ぎ歩で広瀬王を脅かした。

 △9四歩の局面は20世紀に流行した相矢倉、「脇システム」の基本形。解説の大石直嗣七段(30)は「広瀬八段の誘導という印象です。広瀬八段が経験の少ない局面であることは渡辺王将も認識済み。自然に対応されてます」として渡辺の経験、広瀬の準備の争いと見立てた。

 振り飛車党から転向した広瀬は脇システムの経験値で劣る。先手が若干勝率で上回る競技特性。後手番でのいわばブレークは価値が高いとして積極的に出た。20世紀を想起させる意外な戦型選択に渡辺も呼吸を合わせ、反転攻勢に転じた。

 封じ手後、渡辺は2五飛の活用に命運を託すように、「類型がないが負担にならず、好機に使えるように」と狙いを示し、59手目▲4一角との連動を思い描いた。

 局面が落ち着けば楽しみの多い広瀬は「(渡辺の攻めを)受けているから時間を使わざるを得なかった」と79分差がついた考慮時間差への懸念を隠さなかった。

 対局場の窓外からは大阪城天守閣をほぼ同じ高さで見渡せる。築城した豊臣秀吉は当時の将棋が「玉将」同士で面白くないとして片方を「王将」へ改めさせた逸話を持つ、王将戦の聖地。第69期の王将位へ王手をかける大一番は今日決着する。

 《封じ手は?》
 ▼正立会人東和男八段 △1四歩ではないか。香を取りに行き駒得を目指すはず。
 ▼副立会人大石直嗣七段 △3四銀。さらに端歩をついて広瀬王の懐を広くする。
 ▼記録係清水航二段 △8六歩。1筋の香を取る前に攻めの一手で反撃ののろしに。

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