「007」全世界公開延期 世界2位1兆円中国市場“封鎖”で苦渋の決断 コロナ禍ハリウッド映画にも

[ 2020年3月6日 05:30 ]

ダニエル・クレイグ主演の「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」の一場面
Photo By 提供写真

 世界最強のスパイもコロナにはかなわない!?新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、人気映画「007」の製作者が4日(日本時間5日)、全世界で来月に予定していた最新作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開を11月まで7カ月延期すると発表した。観客動員への打撃などを慎重に検討して判断したもの。コロナ渦でハリウッド映画が全世界で公開延期の措置を取るのは初めて。

 当初は今月31日にロンドンで世界初上映し、英国で4月初旬、日本では同10日に公開を予定していた。新たな公開日は英国が11月12日、米国が同25日。日本では年内公開に向けて調整中だ。「007」シリーズは元々、11月公開が定着していた。25作目となる今作も同様で、昨年11月の公開を目指していたが、監督の交代などで製作が遅延。イレギュラーな公開となっていた。コロナの影響で伝統的な公開時期に戻った形となる。感染への懸念から、ファンらが製作者側に延期を求める動きもあった。

 今作は英俳優ダニエル・クレイグ(52)がジェームズ・ボンドを演じる最後の作品として注目度も高い。製作側は「全世界の映画興行における状況を検証し、熟慮を重ねた結果」と説明しているが、配給関係者は「中国の映画市場が影響したのでは」と推測。現在、現地では約7万館あるとされる劇場の大半が閉鎖中。4月に予定していた北京プレミアや各都市への宣伝ツアーの中止が既に発表されていた。

 中国の映画市場は昨年興収1兆円を突破するなど成長を続けており、米国に次ぐ世界2位の規模を誇る。15年公開の前作「007/スペクター」は全世界興収の約1割を中国の興収が占めた。感染が広がるイタリアや韓国でも興収が大きく落ち込んでおり、配給関係者は「“見る人がいない時期に公開するよりは、遅らせた方がいい”という判断だろう。作品によっては中国での興収がゼロになると、赤字になる可能性も出てくる」と話した。映画界をリードするハリウッド作品の公開延期で、追随する流れも生まれそうだ。

 ▽「007」シリーズ 英作家イアン・フレミングの小説が原作のスパイアクション映画。英国秘密情報部の工作員のジェームズ・ボンドが、知性や戦闘能力を生かして事件を解決する。第1作は1962年公開の「ドクター・ノオ」で、初代ボンドはショーン・コネリー(89)が演じた。クレイグは6代目で、最新作は25作目。ヒロインは「ボンドガール」、ボンドが運転する車は「ボンドカー」と呼ばれ注目を集める。

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2020年3月6日のニュース