「ギブソン」破綻に思う…モノへの“あこがれ”薄い時代に守ってほしい歴史と伝統

[ 2018年5月6日 11:00 ]

 大型連休のさなか、米国の老舗ギターメーカーが経営破綻というニュースが流れた。

 ギターは弾けない私でも、その名は知っている「ギブソン」。エリック・クラプトン(73)、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ(74)、日本でもB’zの松本孝弘(57)をはじめとする多くの世界的ギタリストが愛用。2015年にはジョン・レノンさんが紛失したギブソンのアコースティックギターがオークションに出品され、約3億円で落札されたことが大きな話題となった。

 米メディアなどによると「ギブソン・ブランズ」社は1日に日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条の適用を裁判所に申請した。負債は最大5億ドル(約550億円)。近年、海外の音響機器メーカー買収など多角化戦略を進めたが、逆に経営を圧迫していた。今後は不採算事業から撤退し、本来の「楽器製造に集中する」(同社首脳)ことで再建を目指すという。

 危機説は2月から浮上していた。以降、日本国内の正規品販売店にも20代から60代まで幅広い年齢層のファンから「ギブソンはなくなるのか」「ギターは買えなくなるのか」などと問い合わせが相次いでいたという。しかし、今回の動きの中で、販売店関係者は「商品が入ってこないとは聞いていない」。ギブソンのギター“消滅”は避けられ、ファンはひと安心だろう。

 とはいえ、今後への不安の声も聞こえてくる。ある音楽関係者は「近頃は作りを簡素にした低価格のものを出したりしていた」と指摘。その上で「今まで米国製のみだったが、コスト削減のために他国で生産するとか、そういう方向にいかなければいいが」と話す。急速な進化の一方で、モノへの“あこがれ”が薄くなってきていると感じる時代だからこそ、歴史と伝統は守り抜いてほしいと願っている。

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2018年5月6日のニュース