ステルス総理のハイペースな街頭演説

[ 2017年10月8日 09:47 ]

千葉県のJR柏駅東口でマイクの前に立った安倍首相
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 【小池聡の今日も手探り】安倍晋三首相(自民党総裁)の街頭演説が結構なハイペースで行われている。衆院を解散した9月28日にいきなり東京・渋谷で支持を訴え、10月7日までの10日間で“箱物”での演説を入れると計13回。やらなかったのは10月1日のみで、同3、4、6、7日にはそれぞれ2回マイクを握った。

 この10日間の演説実績を見てみると―。



▽9月28日(解散)

 街頭演説〜東京都渋谷区・JR渋谷駅前

▽29日

 街頭演説〜埼玉県川口市・JR川口駅前

▽30日

 演説〜京都府舞鶴市・同市総合文化会館での立候補予定者演説会

▽10月1日

 なし

▽2日

 街頭演説〜東京都北区・JR赤羽駅東口

▽3日

 街頭演説〜栃木県さくら市・JR氏家駅西口

 街頭演説〜栃木県鹿沼市・そば店駐車場

▽4日

 街頭演説〜茨城県つくば市・つくばエクスプレスつくば駅前

 街頭演説〜茨城県水戸市・JR水戸駅前

▽5日

 街頭演説〜神奈川県川崎市・小田急向ケ丘遊園駅南口

▽6日

 街頭演説〜東京都国分寺市・JR国分寺駅南口

 街頭演説〜東京都立川市・JR立川駅北口

▽7日

 街頭演説〜千葉県柏市・JR柏駅東口

 街頭演説〜千葉県市川市・JR市川駅北口



 今回同様に「大義なき解散」と言われた2014年12月の総選挙の際は、11月21日の解散を受けての初の街頭演説は6日目の同26日。「解散→事実上の選挙戦に突入」とは言い古されたフレーズだが、今回は公示を前に選挙期間中を思わせるスパートぶりだ。

 「今回は短期決戦だから」(自民党関係者)との声もあるが、解散から投開票までの日数は前回とほぼ同じ。政府関係者は「安倍総理はフットワークが軽く、結構動くイメージがあるから、それほど驚く演説ペースとは感じられない」としながらも、「北朝鮮によるミサイル発射実験などに備えて官邸にいる日が多くなるだろうと見ていたので、そういう意味では演説回数は多いと受け止めている」と話した。安倍自民に対する攻撃を強めている希望の党代表・小池百合子都知事が仕掛けた小池劇場に対する危機感の表れだろうか。

 もう一つの特徴が遊説日程を自民党ホームページで告知しない“ステルス”ぶりだ。箱物演説を入れた13回のうち、告知されていたのは9月30日、10月3、4両日の計5回のみ。さすがに各選挙区の公認候補側は予定を把握しているが、一般有権者には分からない。

 首相は東京都議選の最終日に、告示後最初で最後となる街頭演説を秋葉原で実施。「安倍辞めろ」「帰れ」コールを繰り返す一部聴衆に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と言い放ってしまい、大きな批判を浴びた。惨敗に拍車を掛けたと言われている。

 ステルス作戦のはずだった5日には、候補者側が「新百合ケ丘駅南口」での首相街頭演説を告知。小池百合子知事と「百合」が重なるが、インターネットの交流サイト(SNS)でヤジ呼び掛けの書き込みが相次いだことから、急きょ向ケ丘遊園駅南口に変更。ネット上では“ヤジを恐れた”との指摘のほか、“陽動作戦”との声も挙がった。

 長きにわたり国政選挙に携わってきた官邸に近い関係者は「警備上の問題もあろうが、ヤジる人が多く集まるのが分かっているところで、わざわざ演説する必要はない」と場所変更に理解を示しつつ、「気にせず(当初の予定通りに)やるのが一番いいが…」と付け加えた。

 ヤジられてむきになるのは論外だが、一国の総理たる者、どれだけのヤジを浴びようが自らの主張を堂々と訴えてほしいものである。(編集委員)

 ◆小池 聡(こいけ・さとる)1965年、東京都生まれ。89年、スポニチ入社。文化社会部所属。趣味は釣り。10数年前にデスク業務に就いた際、日帰り釣行が厳しくなった渓流でのフライフィッシングから海のルアー釣りに転向。基本は岸から気ままにターゲットを狙う「陸(おか)っぱり」。

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