キスマイ藤ケ谷「真面目にチャラい」ギャップとバランス感覚

[ 2016年6月14日 08:35 ]

 今夏メジャーデビュー5周年を迎える人気男性グループ「Kis―My―Ft2」。その中心メンバーの一人が、俳優としての活動も増えている藤ケ谷太輔(28)。派手なルックスからは想像し難いが、仕事に打ち込む姿勢は真面目。「真面目にチャラい」というキャラクターの裏側を探った。

 「テレビで見るヤンチャそうなイメージとは印象が違いますね」と言うと、「またそれ?」とでも言いたげに笑った。「友達とか周りに凄い言われるんですよ。ある意味で、俺凄くテレビ映り悪いのかなと思っちゃいますよ」。40分間のインタビュー中、彼はずっと背筋をピンと伸ばしたまま椅子に座っていた。

 少し焼けた肌に、明るい髪色。写真撮影では、アイドルらしくすんなりとポーズを決めてしまう。それでいながら、クールでセクシーな大人の色気も身にまとっている。

 「ライブで“俺についてこい!”とかよく言うんですけど、“本当はこんなこと言うタイプじゃないな”と感じることもあるんです」。キャラクターは自分とファンでつくり上げてきたもの。「自分が求められてるのはこうじゃないかなと思ってやってる。急に言わなくなっても、言い過ぎてもダメ。自然とバランスを見ちゃってるのかな」

 キスマイの中心メンバー3人で、北山宏光(30)は頑張り屋、玉森裕太(26)は天然キャラ。関係者は「その間でしっかりバランスを取っていて、周りが見えるのが藤ケ谷。冷静で真面目」という。「自分をどう見せるか」よりも、「キスマイをどう見せたいか」の意識が強い。

 「バラエティーで7人が話す時は、テンポ感とかリズムが凄く大事。自分はこう思ってるけど、ここは笑いに持っていったほうがいいなって時はそうします」。周りに合わせるのが得意。自然と気が利くのだ。

 気遣いは演技にも生きる。18日公開の主演映画「MARS(マース)~ただ、君を愛してる」は、藤ケ谷が演じた樫野零と、飯豊まりえ(18)が演じたヒロインの麻生キラとのキスシーンが見どころの一つ。飯豊は自身初のキスシーン。藤ケ谷自身も緊張した。

 「あんなにチュッチュするのは初めて。だから“俺も恥ずかしいし、こんなふうに撮影するって分からなかったよね。でも、キラと零がキスをするならどうするのかちゃんと考えないとね”って声を掛けました」。撮影前に監督に直談判して時間をもらい、2人で「零ならこうじゃない?」「キラなら首をこう向ける」と打ち合わせして臨んだ。スクリーンに映る飯豊は、落ち着いて藤ケ谷を受け止めていた。

 ジャニーズ事務所に入所したのは98年、小5の時。書類選考を通過したためオーディションを受けた。だが、その書類(履歴書)を誰が事務所に送ったのか分からない。「家族や親戚、僕の周りの友達にも聞いたんですけど、誰も送ってないという。あれがなかったら…。子供好きなので幼稚園の先生か、ディズニーランドで働いてるのかな」

 真剣にアイドルを目指したのは、ジャニーズJr.として「嵐」のバックダンサーに選ばれた03年。「初めて“藤ケ谷”と名前で呼ばれてうれしかった」。公演の最後には嵐のファンから「ありがとう」と言われ、「人が笑顔になってもらうことをしたい」と気付いた。

 下積み期間は長かった。キスマイは04年に結成。11年のCDデビューまで7年かかった。「ずっと腐ってましたね」。何度も辞めようと思った。キスマイの4人で受けたCMのオーディションで、1人だけ落ちることも。「遠回しに“君は違うんだよ”って言われてるのかと思った」と振り返って苦笑した。

 演技を好きにはなれなかった。変化の時は07年。「タッキー&翼」滝沢秀明(34)の主演舞台「滝沢演舞城」で、義経(滝沢)の相手役の弁慶に選ばれた時だった。

 「タッキーは最高だけどユーは最低」「ユーが舞台を台なしにする」。ジャニー喜多川社長に演技を認めてもらえず、毎日しかられた。「選んだのはジャニーさんと滝沢君ですよ。感情的になって“なんで俺を選んだんですか”と言ったら、“ユーが一番身長が高いから”って。クソッと思いましたよ」。

 それなのに、翌年の公演でも、また相手役に選ばれた。「最悪だと思った。でもやるしかないじゃないですか。滝沢君のファンの人に“今年、つまらなかったね”ってことだけは思われたくないから」。先輩に恥をかかせまいと必死に演じた。

 千秋楽のこと。義経と弁慶の別れのシーンで、観客のすすり泣く声が耳に入った。「ちゃんと届いてるって初めて思えた」。演技の魅力を感じた。この2年目、ジャニー社長は「とにかく弁慶が最高だから見て」と周囲に触れ回ったという。

 高校生でアイドルを真剣に目指し、20歳を過ぎて演技の面白さに気付いた。「遅いですよね。でも過去は変えられない」。ゆっくりと地道に熟成させてきた人生。今月25日で29歳。30代に向けた大事な一年となる。

 ◆藤ケ谷 太輔 1987年(昭62)6月25日、神奈川県生まれの28歳。98年にジャニーズ事務所入所。99年にドラマデビュー。11年にKis―My―Ft2でCDデビュー。14年公開の「劇場版仮面ティーチャー」で映画初主演。昨年まで2年連続でベストジーニスト賞。血液型AB。

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