関西ダービー決戦をジャッジする球審 嶋田哲也という男

[ 2023年11月5日 19:23 ]

SMBC日本シリーズ2023第7戦   阪神ーオリックス ( 2023年11月5日    京セラD )

2022年5月31日、の中日―楽天戦で1500試合を達成した嶋田球審
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 【第7戦がスタート】

 両チームともに王手をかけて臨む第7戦が始まった。阪神はスタメンに原口を今シリーズ初めて先発で起用。6番に置き、佐藤輝を7番に下げた。オリックスは1~7番までは前日と同じオーダーに。森を捕手として起用し、8番に野口、9番には福田を据えた。

 【審判員にとっても最高峰の舞台】
 そして関西ダービーの最終決戦をジャッジする球審は嶋田哲也審判員(56)が務める。

 【阪神の投手から審判員へ。嶋田哲也審判員の経歴】
 現役時代は右腕として活躍した嶋田氏は柳井商(山口)から王子製紙米子を経て、90年ドラフト5位で阪神入り。プロ1年目の91年に初登板を果たし、3年目の93年にはプロ初勝利を挙げた。

 98年限りで現役を引退し、99年からセ・リーグ審判員となった。02年に1軍デビューを果たすと、以降は安定感のある判定と仲間からの評価も高いリーダーシップで活躍を続け、3度のオールスターゲーム出場など実績を積み上げた。日本シリーズには14年、16年、20年の過去3度出場。4度目となった今回のシリーズでは第7戦の球審を務める。

 【嶋田哲也という男】
 11年から16年までNPB審判員を務めた記者にとっては元上司。1年目の教育リーグでは初の出張となった雁ノ巣(福岡)遠征では同じクルーとなった。

 【忘れられない金言】
 初日の仕事を終えた後の夕食。当時、宿泊していたキャナルシティホテルの近くにある「八州」で聞いた話が忘れられない。ルーキー審判員で右も左も分からない私は「どうすれば良い審判員になれますか?」と抽象的な質問をした。嶋田氏は「アウトやセーフといった判定能力、トラブル処理については経験に勝る先輩たちに勝てないこともある。ただ、1年目の審判員でも30年目の審判員に勝てることが1つだけある。それがルールの理解度。だから規則書を読みなさい」と教えてくれた。

 その言葉には選手から審判員に転向して以降、積み重ねてきた努力、“大先輩にも勝とう”という向上心がにじんだ。公認野球規則は「審判員必携」とされているが、その中身は難解な記述でベッドで開けばすぐに眠気が襲ってくる「強敵」だ。成果が可視化されにくい地味な取り組みで「万が一」に備え、200ページ以上を繰り返し読んでいく日々。だが、規則的に判断が求められる事象が発生した時には日頃の努力が明確な差を生む。

 「30年目の審判員に勝てることが1つだけある」。嶋田審判員は規則に絶対的な自信を持ってグラウンドに立っているからこそ、その言葉を若手に託したのだろう。
 
 日本シリーズは審判部を代表するベストメンバーが出場する晴れ舞台。どうか大きなトラブルなく第7戦を終えることを願う。(元NPB審判員、アマチュア野球担当・柳内 遼平)

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