エンゼルス球団継続保有の背景 金利高騰で売却額上がらず 「安く売らない」暗黙の了解影響

[ 2023年1月25日 02:30 ]

大勢のファンでにぎわうエンゼルスタジアムの通路(撮影・光山 貴大)

 【奥田秀樹通信員の目】エンゼルスのアート・モレノ・オーナーの説明によると、予備調査で複数の売却先候補と会ったが、その交渉途中で「心はまだエンゼルスとともにあることに気づいた」という。だが、それは詭弁(きべん)に過ぎない。

 USAトゥデー紙によると、エンゼルスには6つ以上のグループが手を挙げていた。候補者たちは球団の財務状況を把握し、球場も訪問。2月には入札額を出す予定だったという。突然の方針転換について、米球界のある大物代理人は「米国の現在の高い金利が影響した」とみている。「エンゼルスは史上最高の25億~30億ドル(約3250億~3900億円)で売れると予測していたが、モレノの望む金額には届かなかった。元々、交渉事で短気なところのある人物。今はやめておこうと気が変わったのだろう」と指摘する。

 球団買収には金融機関からの多額の借り入れが必要だ。球団の値段とは桁が著しく違うが、今米国では住宅ローンも金利が高騰し、月々の返済額が増えるため、住宅販売が激減。住宅価格の伸びも抑制されている。

 実はナショナルズも昨年4月から売却の話を進めているが、いまだに買い手が見つからない。MLB球団のオーナーの間には「球団を安く売らない」という暗黙の了解がある。安く売ってしまうと、他の球団の資産価値にもマイナスの影響が出るからだ。

 モレノ・オーナーには3人の子供がいるが、いずれも球団経営には興味がないといわれている。果たして76歳のオーナーがいつまで球団を持ち続けるのか。数年がたち、金利が下がって、エンゼルスにいい値段が付けば、すぐに売却するのではないかとみている。

 ▼大リーグ機構ロブ・マンフレッド・コミッショナー 強い興味を示す買収候補はいたが、モレノ氏の試合を愛する気持ちが最も重要だったようだ。モレノ家が継続保有を決めたことは喜ばしい。

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2023年1月25日のニュース