【内田雅也の追球】カーブを巡る攻防…大山は仕留め、西勇は巧みに操った

[ 2022年6月8日 08:00 ]

交流戦   阪神2―0ソフトバンク ( 2022年6月7日    ペイペイD )

<ソ・神>2回 1死 左前打を放つ大山(投手・石川)(撮影・成瀬 徹)
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 ソフトバンク・石川柊太の武器はカーブである。球速があり、鋭く縦に曲がるためパワーカーブと呼ばれる。

 Japan Baseball Data『翼』によると今季過去8試合で投げた全690球のうち、変化球で最も多い138球(20・0%)を占める。

 阪神・大山悠輔の決勝打はこのカーブをとらえた一打だった。いや、この夜、大山が石川と対戦した3打席はすべて外角カーブが結果球だった。

 2回表1死で左前打したが、4回表1死一塁では三ゴロ併殺打に打ち取られた。そして迎えた6回表2死二、三塁。捕手・甲斐拓也はタイムを取りマウンドに内野陣を集め話し合った。一塁が空いている状況で打撃好調の大山。敬遠策もあるなか挑んだ勝負に誇りや意地を見る。大山とすれば“勝負ならば、あのカーブがくる”と感じたのではなかろうか。

 初球外角直球見逃しの後、三たび外角カーブを引っ張り、左中間をライナーで破る2点二塁打にしたのである。相手投手の得意球を仕留める主軸らしい一撃だった。

 同じカーブでも阪神・西勇輝にとってはその位置付けが異なる。シュートやチェンジアップ系とは異なり、遊び球に近い。先の『翼』でみれば、今季過去10試合、985球でカーブは63球と6・3%でしかない。結果球となったのは9人で9打数3安打と、決して決め球ではなかった。

 ところが、この夜はこのカーブが効いた。象徴的だったのは強打の柳田悠岐との対戦である。

 3回裏1死一塁では初球外角カーブで見逃し。2ボール2ストライクから、ほぼ真ん中のカーブで空振り三振に取った。柳田の頭に決め球にカーブはなかっただろう。

 5回裏2死二塁のピンチでは、フルカウントからバックドアの外角カーブで見逃し三振。柳田は相当に悔しがった。してやったりの配球である。

 この夜、西勇はカーブを10球投げ、すべてストライクだった。内訳は見逃し5、ファウル2、空振り2、打球1(アルフレド・デスパイネ左前打)で、相手は対応できていなかった。

 西勇自身4連敗中だったソフトバンク相手に目先を変える効果は十分あった。最後になったが、今季初コンビを組んだ捕手・梅野隆太郎の好リードがあったことは言うまでもない。 =敬称略=
 (編集委員)

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