【内田雅也の追球】はつらつ新庄野球に刺激受けた疾走、好守

[ 2022年6月4日 08:00 ]

交流戦   阪神9ー7日本ハム ( 2022年6月3日    甲子園 )

<神・日>6回、気迫のヘッドスライディングを見せる小野寺(左)(撮影・平嶋 理子) 
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 3回で1―7となった時、開幕戦を思い出した。ヤクルトに8―1から逆転負けを喫し、連敗地獄に落ちた、あの悔恨は猛虎たちの胸にも刻まれているはずだ。少しでもあきらめの気配が見えれば、このチームは終わりだと目を凝らした。

 あきらめてなどいなかった。不屈が映る疾走があった。5回裏は代打・北條史也が食らいついて遊撃左に転がし、力走で適時打にした。6回裏も無死一、二塁から右前打で二塁から佐藤輝明が間一髪生還した。2死三塁から二ゴロで一塁に頭から突っ込んだ小野寺暖も間一髪アウトだった。

 新庄剛志が監督となり甲子園に帰ってきた一戦。大リーグ1年目、メッツ時代の激走がよみがえった。2001年6月17日のヤンキース戦(シェイ)。痛む左足で併殺を逃れる力走をし一塁に生きた。5点差逆転勝利を呼んだ。地元紙ニューヨークポストが「カミカゼ・スプリント」(神風の疾走)と称賛した。主砲マイク・ピアザの談話があり「新庄がいて10勝は上乗せできている」とその走塁と守備、そして元気さをたたえていた。疾走は活気を呼ぶのだ。

 中盤から流れを呼んだのは守備だった。5回表は盗塁刺。6回表無死二塁での遊ゴロ三塁刺殺。7回表の6―4―3は中野拓夢グラブトスを糸原健斗が素手で受けて送球した美技だった。8回表無死一塁ではバント小飛球に捕手・長坂が素早い出足で併殺に仕留めた。

 試合前、日本ハムチーム統轄副本部長・岩本賢一が「甲子園はいいですね」と話していた。「選手たちも甲子園でできることを本当に喜んでいます」。交流戦を甲子園で行う際、パの関係者からよく聞く。2年に1度、3試合の甲子園が楽しみで喜びにあふれている。

 新庄も16年ぶりの甲子園を懐かしみ、喜んでいた。監督や選手たちのそんな感慨は力になる。フルスイングに満塁スクイズ、満塁ヒットエンドランと奔放に攻めたてた。

 新庄の姿勢に監督・矢野燿大も楽しむ姿勢を思い起こしたろうか。はつらつな相手に刺激を受けた。攻守が入れ替わりながら進める野球では相手に奮い立つことがある。

 かつてのプリンスを懐かしむファンも多く、今季最多の観衆4万2574人が訪れた。新庄が甲子園に風を吹かせた好試合だった。=敬称略=(編集委員)

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