ヤクルト・ライアンV弾で“二刀流ショー” 「1―0の決勝弾&完封」逃すも本職8回3安打零封

[ 2022年6月4日 05:30 ]

交流戦   ヤクルト1―0西武 ( 2022年6月3日    神宮 )

<ヤ・西>5回、ソロを放つ小川(撮影・西海健太郎)
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 本人も「まさか入るとは思わなかったので全力疾走した」と驚いた。ヤクルトナインも笑顔で頭を抱えた。この試合で唯一の得点となるソロを放ったのは投手の小川だ。真面目な性格の選手会長も、この日ばかりはお立ち台で「めちゃくちゃ気持ちいい。素振りしてきたかいがありました」と言って笑わせた。

 実は高校通算11本塁打の打力を発揮したのは0―0の5回。先頭で打席に入り、好投手の高橋を相手に粘った。7球目、146キロの高め直球を強振。高い放物線を描いた打球は左翼席最前列に着弾した。今季初安打が自身6年ぶり、プロ通算3本目のアーチに。交流戦でセ・リーグの投手が本塁打を放つのは初で高津監督も「ホームランは全く予測していなかった」と驚いた。

 努力を惜しまなかったおかげだ。創価大時代に読み、現在の投球フォームの参考にもしたノーラン・ライアンの著書「ピッチャーズ・バイブル」の最終章「完全なるピッチャー」にある一節。「自分の能力ぎりぎりまでの挑戦を続けていけば必ず何かを成し遂げられる」。時折、読み返す大投手の思考。「完全な人間なんていないけど挑戦し続けることが大事」。10年目を迎える今季も登板間に打撃練習を取り入れ「9人目の野手」としての準備を怠ることはない。

 投球でも山川を2打席連続三振に斬るなど8回3安打無失点。球団では79年の松岡弘以来3人目の「1―0の決勝弾&完封」は逃したが、今季3勝目で首位を走るチームを交流戦4カード連続で初戦勝利へ導いた。「これからも団結して熱い戦いをしていきましょう」と小川。ファンは大きな拍手で呼応した。(青森 正宣)

 《交流戦ではセ投手初》小川(ヤ)が5回に決勝本塁打。自身の本塁打は16年8月17日DeNA戦以来3本目。交流戦に投手として出場しての本塁打は18年上原(日)以来8人目でセ投手では初めて。決勝弾となったのも初だ。また、ヤクルト投手の1―0決勝本塁打は53年6月24日阪神戦の金田正一(完封)、79年9月2日巨人戦の松岡弘(完封)に次ぎ43年ぶり3人目となった。なお、ヤクルト投手で3本塁打以上は金田正一の35本を筆頭に8人目。

 ▼松岡弘氏(79年9月2日の巨人戦。自身の本塁打で1―0完封勝利)騒がれて入団した江川卓との初対決だった。打線は2安打に抑えられたけど、(3回の本塁打は)真っすぐに大ヤマを懸けて打ったんだ。(投手自身の)本塁打1本で勝ってごらん。気持ちいいよ。いい思い出だ。小川投手は惜しかったねえ。チーム事情もあるし仕方ないが、こんな機会はめったにない。そんなに簡単ではないが、また次に目指してくれることを期待したいね。

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