メジャーは夢ではなく、明確な目標だった大谷 日本選手には想像すらできなかった本塁打キングも現実味

[ 2021年5月16日 09:30 ]

エンゼルス・大谷
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 記者は44歳で静岡出身。小学生時代はサッカー部に所属していたが、野球も得意だったため、文集などの「将来の夢」の欄には「プロ野球選手」と記入していた。理由は明白。当時はサッカーに「プロ」がなかったからだ。プロがあるのが当たり前で、明確に目標に設定できる現代の子供たちは幸せだと思う。

 目標をどこに設定するか。心身ともに急成長を遂げる小学校高学年から高校生ぐらいまでは、特に重要なことだと思う。それを改めて感じさせているのが、世界最高峰のメジャーの舞台で投打の「二刀流」としてフル回転しているエンゼルス・大谷だ。何よりも注目を集めているのが、本塁打争い。日本時間15日のレッドソックス戦では元祖・二刀流選手でもあるベーブ・ルースもプレーした伝統の球場「フェンウェイ・パーク」で、高さ約11メートルの左翼フェンス「グリーンモンスター」を超えるリーグトップタイ位の11号(日本時間15日時点)を放った。ほんの数年前まで、日本選手がメジャーで本塁打争いを展開することなんて想像もできなかった。

 かつて「メジャー挑戦」は多くの選手たちにとって目標ではなく夢だった。プロ野球で活躍した一部の選手が「その先」を目指す権利を得た。情報も少ない時代。渡米してからボールの違いや変化量に驚き、パワー不足を補うために急激な肉体改造を行ったりもした。大谷は違う。花巻東時代からメジャーは明確な目標で、日本ハムに入団後も「メジャーで二刀流選手として成功すること」を将来的な目標として綿密なプログラムに沿って練習や筋力トレーニングを実施。野手では18年の1年目から22本塁打を放ち、コンディションも万全となった4年目の今季は本塁打争いまで展開している。

 日本ハム時代は二人三脚で大谷の二刀流での成長をサポートした栗山監督は「ファイターズに来る時に、誰も歩いたことのない道を歩くと決めてやってきた。(常識外と)皆に思ってもらえるのは、翔平が頑張っている証明だと思う」と感慨深げに語る。「いつか自分も大谷選手のようになりたい」と高い志を持った子供たちが、数年後には野球界を盛り上げてくれるだろう。(記者コラム・山田忠範)

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2021年5月16日のニュース