斎藤隆氏が語る楽天・田中将大の日本適応のカギ 軟らかい球とコンタクト重視の打者への球種取捨

[ 2021年1月30日 20:42 ]

斎藤隆氏

 8年ぶりに日本球界に帰ってきた楽天・田中将大投手(32)。メジャーと日本ではボールもマウンドも違い、適応に苦労する投手も多い。13年の楽天日本一メンバーで、田中と同じく、この年8年ぶりにメジャーから復帰した斎藤隆氏(50)が、自身の経験談を基に適応が必要なポイントについて語った。

 田中といえども、7年間のブランクを考えると、「日本仕様」にアジャストするには時間が必要だろう。日本のボールは感覚的にも小さく、僕の場合はさらに軟らかく感じた。指先に力を入れる時、はじくような感覚ではなく、粘りつくような軟らかさ。感覚が違うだけで、変化球の曲がり方も変わってくる。

 例えば、田中がメジャーで多用していたツーシーム。特に左打者の内角ボールゾーンから入ってくるフロントドアは大きな武器だったが、日本のボールではそこまで曲がらない。ただ、あの球はフルスイングしてくるメジャーの打者には有効だが、コンタクトの意識が強い日本の打者にはそこまで必要ないかもしれない。決め球のスプリットもメジャーでは改良を加えているはず。日本に戻り、落ち方もまた変わると思う。球種の選別を含めて、打者の反応などを見ながら調整していくことになるだろう。

 マウンドは、特にパ・リーグはメジャーのように高くて硬い球場も多くなっているので、そこまで影響はない。ただ、体の使い方は多少変わってくるので、トレーナーとしっかりコミュニケーションを取ることが大事。その点、田中の体をよく知っているスタッフがいることは大きい。僕の場合は43歳シーズンでの復帰で、32歳の田中と比較できないが、キャンプは2軍で調整させてもらったことで、焦らずアジャストすることができた。

 田中からは楽天復帰を報告するメールをもらい、「100%決断を応援する」と返した。いろいろ悩んだと思うが、今やどちらが上ではなく、選択肢はメジャー30球団に限らず、プラス日本12球団で考える時代だ。

 田中はメジャーの強打者たちと対戦し、以前よりもダイナミックさを増した。しかし、彼の良さはそれだけではない。フィールディングのうまさ、クイック、けん制の速さ、打者との駆け引き…。米国ではあまり必要ではなかった投手の総合的な能力を持っている。ヤンキースの田中が帰ってくるのではなく、バージョンアップした新しい田中が見られるのではないか。(野球評論家)

 ◇斎藤 隆(さいとう・たかし)1970年(昭45)2月14日生まれ、宮城県出身の50歳。東北から東北福祉大を経て、91年ドラフト1位で大洋(現DeNA)に入団。06年からメジャーに移籍し、ドジャースをはじめ5球団でプレー。07年には大リーグの球宴に出場。13年に楽天に移籍し、15年に現役引退。昨季はヤクルト1軍投手コーチを務めた。日米通算112勝96敗139セーブ、防御率3・50。右投げ左打ち。

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