【阪神のV逸検証(5)】暗闇の中に現れた希望の存在・小幡 高卒2年目の今季に大躍進

[ 2020年11月7日 06:00 ]

矢野阪神2年目の光と影~猛虎に何が起こったか

2年目の若武者・小幡の躍動が明るい未来を感じさせてくれた

 コロナ騒動による選手の大量離脱、異例とも言える揚塩健治社長のシーズン途中での退任発表――。グラウンド外での暗いニュースが先行した印象が否めない今季の阪神だったが、明るい未来を感じさせたのが小幡竜平内野手(20)だった。

 コロナ騒動による選手の大量離脱以前に、自力でチャンスをつかんだ。8月21日にプロ初昇格を果たすまで、ウエスタン・リーグで打率・277、当時リーグトップの8盗塁。さらに平田勝男2軍監督に「タイガースじゃ小幡が一番うまいよ」と言わしめた守備と、三拍子全てで成長を遂げた。8月8日の同・広島戦で自打球が顔面に直撃して鼻骨を骨折するアクシデントも、かつての鳥谷を彷彿(ほうふつ)とさせる黒色のフェースガードを付けてわずか2日後に実戦復帰。そこからウエスタン・リーグ6試合で17打数9安打と結果を残し、高卒2年目ながら1軍への切符をつかみ取った。

 プロ2試合目の先発となった同27日中日戦、5回1死で柳からプロ初安打。その後二塁に進むと、近本の中前打で「本能的に頭からいっちゃいました」と鼻骨骨折がまだ完治していない中、ヘッドスライディングで本塁生還を果たした。9月4日の巨人戦では同学年・戸郷から適時打含む2安打。球団10代野手の巨人戦適時打は、91年9月10日に新庄剛志が記録して以来、29年ぶりだった。「去年からずっと活躍していたのを見て悔しいなという気持ちもあった。今日は絶対に打ってやろうという気持ちでした」。同じく同級生の根尾(中日)、小園(広島)らについても「根尾世代(の名)が変わるように頑張ります」と対抗心を隠さず。ガッツあふれるプレーで新風を吹き込んだ。

 コロナ禍で木浪が離脱した9月25日ヤクルト戦からは、本職とする遊撃で24試合連続先発出場。11月5日時点で得点圏打率・321を記録するなど、勝負強さも発揮して奮闘した。10月2日の巨人戦では初の猛打賞。球団高卒2年目野手の左打者としては、75年8月13日巨人戦の掛布以来45年ぶりとなる快挙を果たし「遠慮せずにこのままレギュラーをつかめるように頑張ります!」と勢いよく宣言した。

 木浪の復帰後はベンチで出番に備える日々が続く。それでも1軍に同行し続けた今季の経験が、来季以降の大きな糧になるのは言うまでもない。10月14、15日の中日戦では「7番・井上」「8番・小幡」と10代野手が先発オーダーに並んだ。明るい将来を予感させる、「トッププロスペクト」の共演だった。(阪井 日向)
=おわり= 

続きを表示

この記事のフォト

2020年11月7日のニュース