理想の打撃求め…阪神ドラ2・井上に見る着実な成長 不振にもがいた猛暑乗り越えて

[ 2020年10月8日 13:00 ]

阪神・井上
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 阪神2軍は新型コロナウイルス“集団感染”によって藤浪、能見ら9選手が緊急昇格した先月25日以降、ウエスタン・リーグで1分けを挟んで7連敗。戦力ダウンによって厳しい戦いを強いられている。それでも平田2軍監督が「別にやりくりに関しては問題ない。若い子にとってはどんどん出られるチャンスが出てきた。ガクッとメンバーは落ちるけど、そういう若い子たちに課題が出るだけいい」と語る通り、若手選手にとっては実戦経験を積む貴重な機会になっているのも事実だ。

 その中でも、ドラフト2位の井上広大外野手(19)はここまでウエスタン57試合に全て4番として出場。打率は・212ながら、7本塁打はリーグトップタイ、30打点は同3位と高卒1年目ながら堂々の成績を残している。

 そんな期待の和製大砲候補も、夏場は壁にぶち当たった。8月は月間打率・175、本塁打ゼロ。7月だけで4本のアーチをかけたのが一転、持ち味の長打力は影を潜め、7月29日ソフトバンク戦で左腕・大竹から放った4号本塁打を最後に、出場26試合111打席にわたって一発から遠ざかった。大会3本塁打で履正社を初の甲子園優勝に導いてから1年。初めて経験する連戦続きの夏は、想像以上に過酷なものだった。

 不振にもがき、苦しむ猛暑の日々。それでも毎試合後には必ずバットを振り続け、理想の打撃を模索し続けた。「周りの人から言われたのは、姿勢が前屈みになってボールを追ってしまっていた。前屈みでボールを追うから、振ってもカット打ちというか、外のボールに当たらない感じ」。ある日には嘉勢敏弘打撃投手から「打席に入る前に、カブレラ(元西武など)みたいに若干胸を張るくらいの感覚でいったらスッと(打席に)入れるんじゃないか」とアドバイスをもらった。これが転機になったという。

 前屈みかつ、棒立ち気味だったという以前の打撃から、軽く胸を張って重心を下げ、下半身を使ってボールを捉えることを意識。「右足の内転筋でボールを掴みにいって、しっかりと両内股でボールをつぶす感覚」。日々の練習や試合後の特打で感覚を染みこませ、打球の角度が少しずつ上がるようになった。9月19日の中日戦(ナゴヤ球場)で笠原から52日ぶりの一発を放つなど、9月は打率・268、3本塁打。さらに特筆すべきは14四球を選ぶなど・414を残した出塁率だろう。北川2軍打撃コーチも「常にフルスイングができるようになってきたのと、高めの速いボールに対しての見極めができるようになってきている」と入団当初からの成長を認める。

 夏場の試練も含めて、積み重ねてきている幾多の経験は「1軍の舞台でファンを喜ばせる選手になる」という目標への血肉と化す。「やっぱり求めるところは高いんで。今は低めの変化球の見極め、選球眼をちょっとずつ上げていこうと意識させている段階です」と北川2軍打撃コーチ。猛虎期待の将来の4番候補は、着実に成長を遂げている。(記者コラム・阪井 日向)

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2020年10月8日のニュース