“夢のような2時間6分”21世紀枠の平田 零敗も創部70年目で初の聖地満喫

[ 2020年8月12日 05:30 ]

2020年甲子園高校野球交流試合   平田0-4創成館 ( 2020年8月11日    甲子園 )

<高校野球交流試合 創成館・平田>最後の攻撃を前にナインを集めて円陣を組む平田・植田監督(左)(撮影・北條 貴史)
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 3試合が開催され、21世紀枠として春夏通じて初めての甲子園となる選抜大会出場を決めていた平田(島根)が第2試合に登場した。創成館(長崎)に零敗ながら善戦。野球の普及など地域貢献が認められ、地元からも応援されて踏みしめた聖地に全力プレーでさわやかな風を吹かせた。

 夢のような2時間6分を戦い終えた平田・植田悟監督(48)は「ありがとうございます」と感謝の言葉から切り出した。

 「いろんな方々の力により、甲子園で選手の夢を実現できた。全国の公立校、甲子園がなくなった球児たちの思いを胸に思う存分、力を発揮できるよう送り出しました」

 こみあげる涙をこらえながら一言一言を絞り出した。どんな時も多くの人の思いを背に戦ってきた。

 唯一の好機だった2回2死満塁で先制できず、以降も本塁が遠かった。競り合いに持ち込んだのは右腕、古川雅也(3年)が力投したからだ。8回2死で降板するまで10安打4失点の粘投。「やりきった気持ちが大きいがチームを勝たせたかった。緊張はなく、楽しかった」。特別な場所で目いっぱい腕を振り、守備陣も無失策で支えた。

 今春選抜に21世紀枠として創部70年目で春夏通じて初出場を決めていた。植田監督が就任後に始めた地域の子供に向けた野球体験会など、18年から高野連が主催する「高校野球200年構想」に先んじた地域への普及活動などが評価された。15、19年には中国地区推薦校となるも落選しており、三度目の正直に地元は大いに盛り上がった。

 コロナ禍での中止に落胆して涙する部員たちに植田監督が「せめて雰囲気だけでも」と甲子園のスタジアムツアー参加も検討していたところ、交流試合の開催が決定。真骨頂の「全員野球」を見せる機会に恵まれた。

 戦い抜いた選手たちの顔は晴れやかだった。主将の保科陽太(3年)は「ずっと憧れにしていた夢の甲子園で大好きな野球をできて幸せでした。全国の球児が諦めていた中でプレーできて自信がつきました」とうなずいた。 (田中 想乃)

 《地元も全力後押し》力の限り戦うナインを、地元も全力で後押した。島根県出雲市の同校では試合時間に合わせて全校応援を実施。密集を防ぐため、大型スクリーンでの観戦を取りやめ、3学年4クラスずつ計12教室に設置したスクリーンにテレビ映像を映した。生徒、教員合わせて約450人は声を出すことなく、拍手やメガホンを叩いて応援。織部道雄教頭(56)は「平田高校らしさを随所に見せてくれました。見ている者が勇気をもらえる試合でした」と奮闘を称えた。

 10日の出発式では同校吹奏楽部、地元の「平田吹奏楽団」が約40人の楽団を組んで激励。平田太鼓も演奏され、長岡秀人出雲市長、一般の市民も式に出席した。堂々と戦い抜いたナインは地元の誇りだった。

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