ハム村田 飛躍の逆輸入右腕が語った球団への愛着、“神様”上原への思い

[ 2018年8月28日 09:00 ]

日本球界復帰2年目の今季、5勝と好調の村田(撮影・高橋茂夫)
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 米球界から日本に復帰して2年目となる今季に大きく飛躍した日本ハム・村田透投手(33)がスポニチ本紙のインタビューに応じた。07年の大学生・社会人ドラフト1巡目で巨人に入団もわずか3年で戦力外通告を受け、現役にこだわって渡米。当時の心境や今季好調の要因、尊敬する巨人・上原浩治投手(43)への思いなども激白した。(構成・山田 忠範)

 ――日本球界に復帰して2年目の今季は13試合で5勝2敗、防御率3・09。何か変えたところはあるのか?

 「去年から技術的なところも球種も変えたところはないです。でも、考え方は大きく変わった。去年まで変に考え過ぎて自分を苦しめていた部分がある」

 ――具体的には?

 「日本で1軍の実績がなく、米国で6年間プレーして帰ってきたので“日本の打者は打つのがうまい”や“バットに当てるのがうまい”というイメージを強く持っていた。だから去年はコースを狙い過ぎてカウントを不利にすることが多かったと思う。1年経験したことで対処方法も分かったし、今年は全体的に大胆に攻めている」

 ――今年はソフトバンクからベテラン捕手の鶴岡が加入した。

 「心強いです。今年はツルさんも含め、キャッチャーが僕がどういう投手かを分かってくれたことも大きい。やっぱり自分は日本人の中でも少ない、ボールを動かしてゴロで打ち取るタイプなので」

 ――昨年の唯一の白星に続き、今年も5月31日に古巣の巨人から白星をマークした。

 「巨人はプロに導いてくれた球団。感謝してます。でもマウンドに上がったら古巣だろうが、どこだろうが自分の投球をするだけ」

 ――その試合では大体大、巨人でも先輩だった巨人・上原と“同じ試合で投げる”という一つの夢がかなった。

 「その点は凄く感慨深かった。上原さんは今でも雲の上の神様。巨人でも1年間(08年)は一緒だったけど米国でも食事に誘ってもらったり、お世話になった。最初の頃は“もっと頑張れ”とか“それじゃアカン”ばかりだったけど、メジャーデビューした翌年(16年)の1月に東京で会った時に“諦めずやってメジャーまで行ったのは凄いな”と一度だけ褒めてもらえた。本当にうれしかったし、少しだけ認めてもらえたと思いました」

 ――戦力外でも現役にこだわり、単身渡米したことが報われた。

 「当時は野球をやめる選択肢はなかった。巨人から打撃投手のオファーをもらって周りからも“打撃投手になっておけ”と説得されたけど、やり切った感もなかった。結果、トライアウトでインディアンスが声を掛けてくれたけど、現役なら韓国でも台湾でもどこでもよかった。メジャーで投げたいというこだわりもなかったので」

 ――米国生活が自身にもたらしたものは?

 「もちろん野球も成長できたけど、一番は人間的に幅が広がった。通訳もいなかったので自分で何でもしなければいけなかった。性格も積極的になれたと思う。あのまま日本にいたら視野が狭い人間のままだった」

 ――16年オフに帰国して日本ハム入団を決めた理由は?

 「いち早くオファーを頂いたこともあるけど、一番は吉村GMを中心にメジャーに近い考え方や組織を持っているチームであること(※)。米国での6年間、キャンプで投げ込んだり、試合で100球以上を投げることもなかった。“日本だから日本式でやれ”と言われても自分はできない。日本ハムは自分に合っているしいい環境でやれている。入団して本当によかったです」

 ――優勝の可能性もゼロではない。残り試合に向けて。

 「ただ単に投げるためだけに日本に来たわけではない。やっぱり優勝したい。少しでもチームに貢献できるように頑張ります」

 ≪取材後記≫ 村田が巨人に在籍していた08〜10年の3年間は記者も巨人担当。そして記者が16年10月から日本ハム担当となると村田も同12月に米球界から7年ぶりに日本復帰を決め日本ハムに入団した。なので勝手に縁を感じている。巨人時代の村田を取材する機会は少なかったが、09年6月に1度だけ東京ドームの1軍練習に合流した。結局、首脳陣にブルペン投球を披露しただけ。自身も「当時はやさぐれていて“どうせ1軍は無理やろ”と思っていた」と振り返る。どこか斜に構えていた男が米国で酸いも甘いも経験し「逆輸入右腕」として活躍。感慨深い。(山田 忠範)

 ※メジャーのタイガースでGM補佐も務めた吉村浩GMを中心に先進的なチーム運営で、近年では16年から春季キャンプをアリゾナで行い、今年からレンジャーズと業務提携。選手を数値化した独自のデータベースの活用、自主性を重んじる指導法などで北海道移転後の04年から過去14年で5度のリーグ優勝と2度の日本一を達成。

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