球児1341日ぶりセーブ オール直球3者斬りに甲子園大興奮

[ 2016年5月19日 05:30 ]

<神・中>セーブを挙げた藤川は右手を掲げられ笑顔をみせる

セ・リーグ 阪神3-2中日

(5月18日 甲子園)
 「炎のストッパー」が甲子園の9回のマウンドに帰ってきた。阪神の藤川球児投手(35)が3―2で登板し、3者凡退。国内では12年9月15日の巨人戦(東京ドーム)以来、実に1341日ぶりのセーブを挙げた。現守護神・マテオのコンディション不良のための緊急措置ながら、球場の盛り上がりも最高潮でチームに勢いを注入。勝率を5割に戻し、再攻勢へののろしとなる快投を見せた。

 かつて相手ベンチに絶望感を漂わせたリンドバーグの名曲が甲子園に流れた。「every little thing every precious thing」。9回のマウンドに球児が帰ってきた。一夜限りかもしれない。それでも、その瞬間を待ち望んでいたファンがどれほどいたかを証明するように、球場が熱狂に包まれた。

 「どこをやっても勝ってくれればいい。声援は聞こえましたし、後押しはありました。(かつての記憶は)それは感じないようにしていた。ゲームに集中しました」

 3―2の緊迫した展開。先頭の堂上にいきなり3ボールとするが、踏んできた場数が違う。そこから真っすぐ3球で空振り三振を奪うと、一気に「火の玉モード」突入だ。亀沢を二ゴロ、代打・野本を中飛に仕留め、終わってみれば13球全球ストレート。野本の2球目には今季最速の148キロもマークし、虎では実に1341日ぶりのセーブを挙げた。

 先発転向での4年ぶり古巣復帰は、5試合で1勝2敗。結果が出ずに中継ぎに配置転換された。それでも投手陣の精神的支柱としての役割だけはまっとうした。この試合の前にも横山を勇気づけていた。

 「横山と約束したんでね。『後ろにしっかりした投手がいるから、お前がいい投球をしたら勝てる。大丈夫や』と送り出したんで」

 17日の試合前練習では甲子園球場のスタンドの階段を投球動作を交えながら今季初めて上り下りした。「JFK」の全盛時代によくやったトレーニングだ。「自分に足りないところを補うため」。与えられた持ち場で復活するための準備は怠らなかった。

 この日の試合前、金本監督が投手陣を集めて異例のゲキを飛ばした。野手の失策が原因での失点が続いたため「持ちつ持たれつだから。投手も頑張ってほしい」。百戦錬磨の藤川にとっては「僕らは言われているようじゃいけない」と話したが、指揮官の熱い思いにも応えた。

 マテオとドリスがコンディション不良で登板不可能だった。準備もしていなかった。金本監督も「球児の経験にかけた」と話す緊急処置での登板だった。ただ「守護神・球児」の輝きはやはり格別。今後の内容次第では本格復帰する日も来るかもしれない。(山添 晴治)

 ▼阪神・矢野コーチ(かつては藤川と組んでいた)ああいう場面を彼は今まで経験しているから信じていた。先発だとどうしても長いイニングを考えるので球児の良さが出てなかったのかもしれないね。球児が出てきたときの球場の雰囲気も、全てがなつかしかった。

 ▼阪神・香田投手コーチ(藤川のクローザー起用に)最後は球児と決めていたわけではなかった。経験とか、そういうものを信じてね。先発やってもらったり、リリーフやってもらったり大変だけど、1点差の苦しい場面で経験が生きたと思う。(今後も同様の起用は)1つの選択肢ができた。ドリスとマテオの二人がいる。彼らにアクシデントがあった時に、投げるパターンができたということ。

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2016年5月19日のニュース