オリ大型補強なぜ空回り(2)トレードにおびえる選手、まとめ役不在

[ 2015年6月17日 10:30 ]

左袖にキャプテンマークの糸井。前半戦は調子が上がらなかった

 オフに大型補強に成功し、開幕前には優勝候補にも挙げられたオリックスが沈んでいる。66試合を終えて、25勝40敗1分け、勝率・385でまさかの最下位。今月2日には森脇浩司監督(54)の休養が早々と発表された。舞台裏では何が起きていたのか。低迷の真相と逆襲のカギを探る第2回。

 騒動が始まったのは5月上旬だ。他球団が鉄平を狙っているとのニュースが一部で報道された。2軍戦で打撃好調のベテランに、水面下でトレード交渉の話が挙がっているというものだ。直後、瀬戸山球団本部長が鉄平に「そんな事実はないから、安心して練習に取り組んでほしい」と事情説明がなされた。事態が大きくなる前に食い止めたかに見えたが、揺れは収まらなかった。

 その後、2軍に落ちる選手は「自分はトレードですか」と不安がった。加藤康幸編成部長が「トレードなんてないから」と選手に否定する異常事態も起こっていた。だが、選手達は安心できない。13年1月、当時選手会長だった大引(現ヤクルト)を含む大型トレードが日本ハムと成立した。森脇監督が就任した直後の秋季キャンプで、何度もチーム再建のため会談していた大引が、あっさりとトレードで出された。その一部始終を見ていた選手からすれば、安心できるはずもない。「ボクもトレードされるんでしょうか」。チームは揺れた。

 動揺する選手がいれば、それをまとめるのがリーダーだ。森脇監督は、今季から糸井を新キャプテンに指名している。「リーダーシップを取れる人間を増やしたい」。まさに今年、強いオリックスの象徴になるはずだった。だが、糸井は体調が万全とはいかず、成績も伴わず、いつしか低迷の責任を1人で背負い込んでしまった。本来ならば、平野恵、坂口といった昨年チームをまとめた2人のサポートが得られるはずが、ケガや不調で5月に入ると2人とも2軍に落ちていた。

 元々、平野恵が1軍キャンプにいれば違っただろう、という声もある。若い選手たちに「どうやって練習するか、どういう準備するか」を、兄貴分としてレクチャーしていたからだ。まとめ役の不在は、至る所でチームを揺るがした。効果的な選手間ミーティングも少なかった。

 それはブルペンも同じだった。救援陣は「勤続疲労」で結果が出なかったというが、それだけが理由ではない。大黒柱の岸田、平野佳がケガや不調で支えきれなかったことも要因だ。ムードメーカーの比嘉も右肩痛で開幕から2軍暮らし。精神的な影響が狂いを生じさせていた。いかに、チームリーダーが大切か、を物語っていた。

 そのころチーム内で「金子さん、まだですか」と復帰を待ちわびる声が相次いだ。もはや、エースは最後の切り札だった。5月14日、森脇監督と金子の2者会談が持たれている。内容については極秘だが、2軍戦で投げなくてもいけるという金子の言葉を、森脇監督が了承したようだ。お互いに1日でも早くと思ったのだろう。だが、復帰戦となった同23日のロッテ戦に、本来の切れ味はなく、3回6失点のKO劇。金子が2連敗した直後、自力優勝の可能性が消滅し、ほどなく、森脇監督の休養が発表された。

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2015年6月17日のニュース