松本、9球種でV候補幻惑!盛岡大付“8度目正直”夏1勝

[ 2014年8月17日 05:30 ]

<東海大相模・盛岡大付>激しい戦いを制した盛岡大付・松本は歓喜のガッツポーズ

第96回全国高校野球選手権2回戦 盛岡大付4―3東海大相模

(8月16日 甲子園)
 2回戦4試合が行われ、盛岡大付(岩手)が優勝候補筆頭の東海大相模(神奈川)を4―3で下す大金星を挙げた。今秋ドラフト候補にも挙がる松本裕樹投手(3年)は8安打を許しながら多彩な変化球を駆使し、3失点で完投。盛岡大付は8度目の出場で初勝利を挙げた。また、出場校中トップのチーム打率・491を誇る近江(滋賀)が鳴門(徳島)に8―0で快勝。植田海内野手(3年)が3安打2打点を挙げ、滋賀県勢は夏通算30勝となった。
【試合結果 日程】

 最後の最後で、松本が剛腕の顔をのぞかせた。9回2死一塁。東海大相模の6番・長倉に対し、フルカウントから三振を取りにいった直球は外角に外れたが、この日最速の143キロを計測。その後、1点差とされてなおも2死一、三塁のピンチを招いたが、最後の打者を二ゴロに仕留めた。

 「気が抜ける場面がなかった。最後は一番のピンチでドキドキした」

 最速150キロで今大会No・1右腕の呼び声も高かった松本。神奈川大会7試合で11本塁打、チーム打率・421の強力打線との「力と力の勝負」を期待した4万3000人の大観衆をある意味、「裏切る」投球だった。

 「もともと(スピードボールは)投げる気がなかった。相模が相手ですから。スピードを出すより低めで打たせようと思った」。松本は平然と言った。123球中、140キロを超えたのはわずか9球だけ。カーブ、スライダー、ツーシーム、カットボール、フォークボール、チェンジアップの6種類の変化球に加え、直球も120キロ台、130キロ台、140キロ台と投げ分け、「9球種」の組み立てで翻ろうした。奪った三振は7個だったが、13アウトを内野ゴロで奪った。

 この背景には右肘が悲鳴を上げていたこともあった。岩手大会で5試合、42回を投げた疲労から、右肘が炎症を起こし、7月24日の花巻東との同大会決勝戦以降は治療に専念。8月14日にようやく打者相手に25球を投げ、前日はブルペンで軽めに19球。ほぼ、ぶっつけ本番のマウンドで、勝つための投球に徹した。

 ただ、関口清治監督は「あれが本来の投球」とした上で、「(変化球を投げる際の)指先の感覚がプロに近い。7、8割の力で打たれないところに制球できる。それは教えられるものではない」と天性の能力を明かした。

 神奈川出身の右腕の粘りの投球で、夏は8度目の出場で初勝利。指揮官は「横綱を倒すのが甲子園のだいご味。この1勝は万勝分の価値がある」と喜ぶと、番狂わせを演出したエースも「先輩たちの分まで勝った。大きな声で校歌を歌うことができた」と胸を張った。 

 ◆松本 裕樹(まつもと・ゆうき)1996年(平8)4月14日、神奈川県生まれの18歳。小1から南瀬谷ライオンズで野球を始める。南瀬谷中では瀬谷ボーイズに所属。盛岡大付では1年春からベンチ入り。同年夏、2年春に甲子園出場。2年秋から背番号1。高校通算54本塁打。1メートル83、80キロ。右投げ左打ち。

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