山本浩二氏が分析 「鯉のぼりの季節まで」定説覆すカープの強さ

[ 2014年5月6日 09:55 ]

<広・D>連勝しハイタッチの広島ナイン

 鯉のぼりがはためく、こどもの日を迎え、広島がセ・リーグで堂々の首位に立っている。昨季は3位で球団初のクライマックスシリーズ(CS)に進出し、今季は91年以来23年ぶりのリーグ優勝へまっしぐら。91年に指揮を執った最後の優勝監督、山本浩二氏(67)が今年の広島を分析した。かつては「カープは鯉のぼりの季節まで」と呼ばれたが、それも過去の風物詩。本物の強さに迫る。

 今のカープを見ていると23年前のシーズン終盤を思い出す。監督就任3年目。7月中旬は首位中日に最大7・5ゲーム差の4位に沈みながら徐々に浮上し、9月15勝6敗1分けの快進撃で逆転優勝した91年である。

 それ以来の勢い。昔から「カープは鯉のぼりの季節まで」と言われてきたが、開幕から1カ月以上続いているのだから本物だ。ここまで11カードを消化し、初戦は8勝3敗。先手を取って優位に立ち3連勝1回、2勝1敗6回、1勝2敗2回、2勝0敗2回と安定した戦いを続けている。

 試合内容にも安定感がある。21勝のうち17勝は先発が勝利投手になっている。バリントンが4勝で前田健、野村、大瀬良が各3勝、篠田、九里が各2勝。救援投手が勝利投手になった残り4勝はいずれも延長戦だ。10敗は全て先発が敗戦投手。つまり継投に失敗してひっくり返された試合はないというわけである。

 勝ちパターンの継投を支える中継ぎ陣ではFAで巨人入りした大竹の人的補償で獲った一岡も大きいが、中田の存在が光る。6年目右腕。去年までとは見違えるほど切れのいい球を投げている。10試合で15回を投げていまだ無失点。いい形で永川勝、そしてクローザーのミコライオにつないでいる。

 投手陣を再三の好守でもり立てる野手陣。攻撃においては就任5年目を迎えた野村監督の野球が浸透している。91年は3番打者としてチームを引っ張ってくれた野村監督は足をもの凄く大事にする。相手のスキを突いて常に先の塁を狙う。就任時から叩き込んできた意識、状況判断が、失敗を繰り返しながら、実を結んできた。

 象徴的だったのは4月24日のヤクルト戦(神宮)だ。7回無死一塁。丸の三邪飛で一塁走者の菊池がタッチアップして二塁を陥れた。三塁手の川端が背を向けて捕球するのを見て「いける」と判断したのだ。1死二塁からエルドレッドの左前打で一、三塁。広瀬の左犠飛で菊池が生還すると一塁走者のエルドレッドまで二塁に進んだ。

 走る意欲が出ただけではない。エルドレッドは4月27日の巨人戦(マツダ)の延長11回、左翼席へサヨナラ3ラン。左腕山口の内側に入ってくるスライダーを肘を畳んでうまく運んだ。去年ならファウルになった球だ。今年は練習でセンター返しを繰り返して肘の使い方がうまくなり、外角の変化球にも対応できるようになっている。パワーに粘り、確実性が加わった。

 その前を打つ菊池や丸らも力をつけ、1点や2点はすぐ逆転できる雰囲気がある。長いペナントレースには調子が落ちる時期も必ずくると思うが投手を中心とした守りの野球を続けていけば、大崩れすることはない。もうそろそろ私から「カープ最後の優勝監督」という肩書を外してもらってもいいんじゃないかと思っている。

 ▽91年の広島 89、90年と巨人に次ぐ2位で迎えた山本監督の3年目。投手陣は2年目の佐々岡をはじめ、川口や大野ら野手は大砲不在ながらも野村や山崎らが活躍し、シーズン序盤から首位を快走。夏場に一時失速したものの盛り返して9月10日に首位奪回。そのまま5年ぶり6度目のリーグ優勝を果たした。佐々岡が17勝、防御率2.44の2冠でMVPと沢村賞を受賞。大野が最優秀救援投手、野村は2年連続の盗塁王に輝いた。なお、日本シリーズは3勝4敗で西武に敗れた。

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2014年5月6日のニュース