識者も賛否両論…セ予定通り開幕「プラス大きい」「怒り感じる」

[ 2011年3月17日 21:10 ]

 ▼関西大・宮本勝浩教授(理論経済学)の話 セ・リーグが予定通りに開幕することには批判もあるだろうし、被災地の苦労している現状を思えば、基本的にはプラス面は多くない。被災地にとっては野球を楽しむ段階にはないでしょう。ただ、球場で寄付を募ったり、テレビ放送などを通じて支援を呼び掛けたりもできる。プラスとマイナスのどちらが大きいかは判断が難しいが、物心ともに支援を行うという前提があるならば、やらない場合のマイナスよりも、やった場合のプラスの方が若干大きいのではないかと思う。

 ▼帝京大・大坪正則教授(スポーツ経営)の話 スポーツが身近になったのは産業革命以降。スポーツは生活に余裕がある時に成り立つ。その余裕がないとプレーや観戦はなかなかできない。原発のことや地震が続く状況にスポーツはなじまない。(セも)パ・リーグと同じくらい延期した方がいいと思う。経営的視点に立っても落ち着いてからやった方がいい。被災地の様子がテレビで生中継されているような状況では誰も野球に関心を持たない。電車が運行していなかったり、計画停電が行われたりと生活のリズムも狂っている中で、試合を見たいという気にならないだろう。観衆がいてこそ球団は経済的に成り立つ。

 ▼ノンフィクション作家長田渚左さんの話 金本選手(阪神)に全面的に同意見。スポーツに勇気を与えるという要因は本来強いが、被災地はまだ食べ物もなく、夜も真っ暗でそういう状態ではない。まずは夜に電気が通り、人間らしい生活ができるようになってからで、この時期は早すぎる。節電を呼び掛けて、生活の見直しをしましょうとしている中で野球をやってしまうのは、現実と離れすぎている感じがするし、野球界にもよくない。非常識だと思う。本当にいいタイミングでやれば、野球ファンを増やすチャンスにもなる。ある程度の生活が確保されてから「さあ野球だ」となれば、応援する人も増えるだろう。

 ▼スポーツライター玉木正之さんの話 セ・リーグとパ・リーグがなぜ協力してできないのか。現状をどう考えているのか。みんなが心をひとつにしようとしている時に、同じスポーツの中で何をしているのか。言い合いをしている場合じゃない。今の状況は腹立たしいし、怒りを感じる。試合はできるならやるべきだと思う。開催に向けて努力することで、自分たちが何のために野球をやるのか、スポーツマンに何ができるのかが具体的に分かるはず。野球は昼間やればいいし、観客がいなくても試合をすれば、それ自体がメッセージになる。開催したら、募金を集めたり、義援金を出すべきだ。

 ▼スポーツジャーナリスト二宮清純さんの話 選手たちはもう少し待ったらどうだと言っているし、プロ野球が一体だと示すためにも、何が何でも強行するというのではなく、もう少し慎重に考えたらどうか。停電を強いられている中で、ナイトゲームやドームでの試合となると大量の電力が消費される。煌々たるライトの下でのゲームは、被災者感情や国民感情を傷つける。選手も気の毒だ。野球を開幕する環境が整備されるにはもう少し時間がかかる。「野球で勇気を」を口実に強行論を唱える向きもあるが、プロ野球はファンがあってのもの。反発を買うことになれば、こちらの方がむしろマイナスとなりかねない。

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2011年3月17日のニュース