“背水”井川 松井秀ねじ伏せた

[ 2008年2月27日 06:00 ]

打撃投手を務めたヤンキースの井川

 ゴジラ斬りで井川株が急上昇だ。ヤンキースの井川慶投手(28)が25日(日本時間26日)フロリダ州タンパでフリー打撃に初登板。松井秀喜外野手(33)との初対決が実現し、直球で空振りを奪うなど完勝した。メジャー2年目のキャンプは異例ともいえる日本式の投げ込み調整を許可された左腕。もう言い訳ができない背水の状況下で、井川が開幕ローテーションを目指す。

 井川には最高の“練習台”が打席に立った。背番号55。対戦相手のグループに松井がいたのだ。初めて実現した日本人対決の番外編。昨季の汚名返上を誓う左腕の自信にあふれた投球は1年前とは別人だった。
 3ラウンドの対決は計16球。井川の球威ある直球に松井のバットが押し込まれる。「抜けて内角にいかないように気をつけた」。11球目は外角低めの直球で空振りを奪った。この時期は打者は調整段階とはいえ、事前に球種を伝えるフリー打撃で空振りを取るのは容易ではない。最後の16球目は詰まりながら左前に運ばれたが、2年目の成長は直接相まみえた松井自身が一番感じていた。
 「去年の経験を生かそうという意図が感じられた。低めのいいところにきていた」と松井。甘い球だけを叩く意識で臨んだためにバットを出したのは6球。それでも外野に飛ばしたのは左方向への2本だけだ。対決後には米メディアから井川について質問を受け「昨季は彼本来の姿ではない」ときっぱり言った。
 メジャー1年目は2勝3敗、防御率6・25で、2度のマイナー落ちを経験。ポスティングの入札額と合わせて5年総額4600万ドル(約49億6800万円)を投資したヤ軍は今年、キャンプ前日に大きな賭けに出た。キャッシュマンGM、ジラルディ監督、アイランド投手コーチが井川を呼び、約30分間の会談を持った。「やりたいようにやらせる。その代わり日本時代の姿を見せてもらう。ギブ・アンド・テークだ」(同GM)と日本流調整を許可したのだ。
 井川は早いときは朝7時半からブルペンに立ち、4日連続、1日置いてまた3日連続の投げ込みを敢行。1日置きにブルペンに入り、球数が40球前後と決められるメジャーでは異例の調整で、ここまでの投球数は500球を超えた。逆に言えば、これで結果を出せなければ先はないとの“最後通告”ともいえる。
 井川も置かれた立場は分かっている。この日は監督、GMが見つめる前で松井のほかE・ダンカン、レーンの3人と対戦し、40球で安打性は2本だけ。ほとんどの球が低めに集まり「コントロールもついてきた。悪くない」。直球でバットを折るシーンもあり、日本流調整の成果を見せた。
 先発ローテーションは2枠が未確定で、井川を含めた5人で争う。29日の南フロリダ大戦が実戦初戦。背番号29の“本当の姿”を首脳陣も、そして松井も待っている。

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2008年2月27日のニュース