ダイエットや筋トレのモチベーション、上げる方法は?専門家が考える“やる気が出ないとき”の対処法

[ 2023年11月13日 09:00 ]

ダイエットのために運動や食事制限をしよう、体を大きくしたいから筋トレを始めよう! そんな目標を掲げ、はじめの数週間はモチベーション高く張りきるものの、やる気は続かず挫折。

また忘れた頃に「今度こそ」と同じ目標を目指して奮起する……よく目にする失敗パターンではないでしょうか。

なぜモチベーションをキープできないのか。

その原因と対処法、そして目的達成に繋がる目標の立て方を、心理カウンセリングやメンタルトレーニングの普及活動を行う、“心の専門家”養成スクール「アイディアヒューマンサポートサービス」のカウンセラーが解説します。

人はなぜ三日坊主になるのか

健康や美容のために一念発起、ダイエットがんばろう、運動しよう! と決めたはずなのに、なかなか続かない……こういう体験をしたことがある人は多いと思います。

決めた時は「絶対がんばろう!」と思っていたはずなのに、自分は意志が弱いのかな? なんて、落ち込んでしまうこともあるかもしれませんね。

実は、三日坊主になってしまう原因は、脳が持っている「変化を嫌う」という性質にあります。

新しい目標を立てると、今までやってこなかった新しいことを始めますが、これが脳にとっては負荷になります。慣れていることをするときと、新しいことを始めるときでは、脳の違う部位が使われるからなのです。

慣れていること=習慣的な行動は脳の基底核という部分が使われており、私たちは考えるということを意識せずに自動的に行動しています。ところが、新しいことを始めるときには、脳の前頭前野という部分が使われます。

たとえば、早く起きて走ろうとか、食事を変えてみようなどと考えるために前頭前野が使われるのですが、基底核はほとんどエネルギーを使わないのに比べて、前頭前野が使われるときには脳のエネルギー源であるブドウ糖を大量に消費します。

そのため、できるだけエネルギー源を保存しようとする生存本能を持つ私たちの脳は、変化を避けて、いつも通りの行動を好むのです。

この脳の「変化を好まない」という性質が、三日坊主を生みやすい土壌になっているのですね。

つまり、新しく立てた目標が続かないのは、私たちの脳の性質上、簡単なことではないのです。だからこそ、多くの方が「やる気が続かない……」という体験をしているし、それに成功して結果を出している人が少ないのです。

では、どうしたら三日坊主にならずに、立てた目標を続けることができるのでしょうか。

人間心理を紐解いて、やる気を継続させる方法や、やる気が落ちたときにどうしたらいいのか、やる気のメカニズムと、日常にすぐに応用できる方法をお伝えしていきたいと思います。

挫折しにくい目標の立て方とは

挫折しにくい目標の立て方にはコツが二つあります。

目標の立て方のコツ1 目標はスモールステップで!

いきなり大きな目標を立てるだけではなくて、大きな目標の前に、小さい目標を設定していきましょう。つまり、スモールステップを踏んでいくことです。

たとえば、「ダイエットのために運動や食事制限をしよう」と思ったとしたら、一度にいろいろなことを始めるのではなく、ひとつずつ小さいステップを設けるのです。

  • ステップ1 食事は野菜を最初にしっかり食べるようにする。
  • ステップ2 間食は時間と量を決める
  • ステップ3 食事はできるだけゆっくりと食べる

など、小さい変化の階段をつくってみるのです。小さい変化の方が行動しやすく、取り組みやすいものです。また、脳の負荷もそれほどかかりません。

目標達成に必要なものは、小さい変化を少しずつ重ねて、生活習慣を変えることでもあります。新しい習慣も繰り返し行われることで基底核によって考えるという意識なく、習慣的に行動できるようになっていきます。

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目標の立て方のコツ2 我慢と無理はできるだけ小さくする!

甘いものを我慢する。苦しくてもがんばる。こうした我慢を重ねたり無理をすると、必ずどこかで崩れ始めます。

我慢や無理は、欲求を抑えているということですから、これには限界があるのです。ダイエットでよく聞く「リバウンド」は、我慢や無理が切れて、欲求があふれ出してしまう状態のこと。

だから、できるだけ無理や我慢は小さくすること、そして、楽しめる要素を入れてみてください。

いまのライフスタイルでできるところから始めてみる

たとえば、運動習慣がないところから運動を始めようとするとどうしても無理が出てきますし、大変だと思いがちです。だからこそ、人と誘い合ってみる、楽しそうなことから始めてみる、あまり疲れないぐらいの量で始めるなど、「がんばる」を小さくしてみましょう。

脳は変化を避けがちですが、楽しいことは大好きです。だからこそ、自分ができるだけ楽しめる方法を探してみてください。

目標を立てようとするときはモチベーションも上がっているので、つい理想を追い求めて高い目標を立てがちです。ただ、高い目標はモチベーションを落とす原因にもなりやすいのです。だからこそスモールステップ、我慢や無理をしすぎないことを意識してみてください。

長続きしやすい目標を立てれば、「途中でやめちゃった」という挫折も避けることができるのです。

やる気がなかなか出ないときは

目標を立てて続けていくときには、やる気がなかなか出ないこともありますよね。やる気をあげるには何をしたらいいのでしょうか。

どうしてその目標を立てたのか、一番最初を思い出す

もっと健康的な生活をしよう、もっとスリムな自分になろうなど、目標を立てたときの気持ちや目標を立てた時に考えていたことを思い出してみましょう。そこには理由があったはずです。

少しずつの負荷であったとしても、継続していくことはなかなか難しいこと。だからこそ、初心を思い出して、立てた目標が自分にとってどんな意味があるのかを改めて振り返ってみてください。

もっと健康的な生活をしようと思ったのはどんなきっかけだったか。何のために健康的な生活をしようと思ったのか。家族のためだったり、自分の将来のためだったり、体調が良くなかったときに健康が大事だと実感したのかもしれません。

階段とスニーカー

目標の中には、自分が自分の人生に大切だと感じることや、自分の人生に望むものが必ず含まれているはずです。それを思い出すことで、「やっぱり頑張ろう」「続けていこう」という気持ちが湧いてきます。

書き出してみるのもいいと思いますし、誰かと話をしてみてもいいかもしれません。目標の意味を確認していくことで、再びやる気が上がってくるのではないでしょうか。

自分を承認すること

目標を目指して行動を続けていくときに、自分を励ますものはどんなことでしょうか。

脳は「報酬」が大好きです。目標達成にはある程度の時間がかかるもの。だから、目標達成のために行動していても、なかなか「達成感」や「喜び」といったプラスの感情=脳の報酬につながりにくいのです。

そこで、ぜひ取り入れてほしいのが、自分を承認する=ほめることです。

自分はこんなことができるようになった、こんな風に行動してきた……目標達成なかばであっても、目標に取り組み始めたころから今までの自分の変化や頑張りをしっかりほめてあげましょう。ゴールにつくまでご褒美をお預けにするのではなく、日々の承認が大切なのです。

自分で自分を承認することは、モチベーションが落ちたときだけではなく、モチベーションが下がる予防にもなります。

今日頑張った、今までここまで頑張ってきた……自分がやってきたことをしっかりと味わい、頑張ったことを認めることがプラスの感情を味わい、モチベーションアップにつながっていくのです。

次は、いよいよやる気がないときもひとまず行動する方法です。

やる気がないとき、ひとまず行動へ移したい。おすすめの方法

やらないとなーと思っていても、なかなか行動に移れないこともありますよね。その場合には、こんな方法を試してみてください。

【ひとまず行動へ その1】簡単な行動をひとつだけしてみる

きっかけがあると行動しやすいもの。だから、まずは簡単な行動をひとつしてみてください。

運動だったら、まずジャージに着替えてみる。勉強なら、まず机の前に座ってみる。1ページだけ本を読んでみる。こんな風に1分あったらすぐにできることだけ考えてやってみましょう。

脳科学的な観点でいえば、モチベーションアップを司るドーパミンという神経伝達物質は、作業することで脳が刺激を受けて分泌されます。つまり、ちょっとしたことでいいので行動することがモチベーションアップにつながるのです。

お掃除しなくちゃと思いながら、なかなか行動に移せなかったときに、「ごみをまとめよう」みたいな小さいことを始めることで、いつの間にかせっせと片付けをしていた、なんていうことはありませんか? 

まず小さな行動でモチベーションスイッチを入れてみましょう。意外と小さな行動が次の行動を呼んでくれるものなのです。

【ひとまず行動へ その2】活動神経に切り替える

私たちは、自律神経という神経系にコントロールされています。

自律神経には活動時に活性化する「交感神経」とリラックスするときに活性化する「副交感神経」があり、何となく行動する気持ちにならないときにはこの「副交感神経」が優位になっていることがあるのです。

朝起きて、行動しようと思ってもなかなかやる気が出ない、夕方に決めていたことをしようと思っても身体が動きにくい……こんなときには、副交感神経が優位になっていることも多いのです。

そこで、交感神経を優位にする切り替えを行ってみるのもひとつの手です。声を出してみる、冷たいシャワーを浴びる、冷たい水で顔を洗ったり手を洗ったりするのも効果的。ウェットシートを使ってみるのもいいかもしれませんね。

しゃっきりするような刺激を与えることで、活動的な交感神経が優位になり、行動することが容易になっていくのではないでしょうか。

目標達成されたときの未来のイメージが重要!

今までお伝えしてきたように、目標を立てて続けることは、決して簡単なことではありません。だからこそ、心理学を使って、やる気を維持する方法をお伝えしてきました。

やる気は感情ですから、やる気が上がることもあるし、下がることもあります。大事なのは「やる気」という感情をサポートしてあげることなのです。

目標が達成されたら、どんな自分になれるだろう? そんな目標達成された未来のイメージをコラージュにしたり、イメージ画像を貼ってみたり、目標に近い誰かを思い浮かべたりと、目標達成のイメージをどんどん自分に見せてあげましょう。

つまり、やる気という感情にときどき栄養補給をしてあげるのです。

ダイエットであれば、自分のめざす体型になってどんなふうに楽しむかをいろいろ計画してみてもいいかもしれません。健康的な生活ってこんな風に楽しいよね、とイメージしてみるのも気持ちをあげてくれるでしょう。

ダイエットや運動だけではなく、目標が達成されたら、こんなに素敵な自分になれるよね、こんなに楽しいことが待っているよね、という肯定的な未来のイメージをしてみてください。

目標をめざしている間にも心の栄養補給は大切です。自分をほめることを繰り返しながら、未来を楽しみにしていくことがやる気をあげ、目標達成をサポートしてくれることでしょう。

しかし、目標に向けて行動するとき、注意したいポイントがあります。

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「ちゃんとやらなきゃ」が気持ちを折ることもある

また、目標に向けて行動するときには、「ちゃんとやらなきゃ」という考え方に注意してみて下さい。

始めたからには毎日やらないと、とか、失敗してはいけないという考えが強いと、ちょっとした「今日休んじゃった」「今日できなかった」という経験が、目標に向かう気持ちを折ってしまうことがあるかもしれません。

継続することに自信がない方は「三日坊主」を繰り返す、という風に考えてみてください。毎日運動する、食事を制限すると決めていても、ついうっかりしてしまうこともあれば、忘れてしまったり、いろいろな事情でできなかったこともあるでしょう。

できなかったら「おしまい」「挫折した」と考えるのではなく「さあ、またここから始めよう」でいいのです。

3日やって三日後にやらない、となったとしても、そこからまた始めれば「挫折」にはならないはず。「始めたからには、完全に毎日やらないと」ではなく、三日坊主を繰り返す、そうすれば、やった分は結果につながっていくと考えてみてください。

目標は自分を幸せにし、成長させてくれるもの

目標を立てるというと、何となくノルマ的な感じがあったり、どうせ続かないというようなマイナスのイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

目標は、自分が「なりたい姿」を実現する指標のようなもの。目標は、自分や未来への可能性への前向きな気持ちなのです。だからこそ、目標達成への道を楽しく過ごしてみてください。

コツは「無理しない・我慢しない・自分をほめる」です。ポジティブな自分のイメージをもって、自分の可能性を拡げる目標達成をぜひ楽しんでみてください。

著者プロフィール

全心連公認上級プロフェッショナル心理カウンセラー/メンタルトレーナー
浮世満理子(うきよ・まりこ)


アメリカで心理学を学び、帰国後、株式会社アイディアヒューマンサポートサービスを設立。プロスポーツ選手などのトップアスリート、サッカーJ1チームや五輪チーム、芸能人、企業経営者などのメンタルトレーニングを行なうかたわら、多くの方にカウンセリングを学んでほしいと教育部門アカデミーを設立し、心のケアの専門家の育成も行う。一般社団法人全国心理業連合会代表理事。地方自治体とLINEを活用した無料相談を推進している。一般財団法人全国 SNS カウンセリング協議会常務理事。TV にも多数出演。

全心連公認上級プロフェッショナル心理カウンセラー/メンタルトレーナー
織田貴子(おだ・たかこ)


1997年アメリカアイオワ州アイオワウエズリアンカレッジ卒業、心理学専攻。大学在学中、心理学諸理論をはじめ、心理学的実験・調査・心理検査、社会学・構造心理学・産業心理学・教育施設ボランティア活動など幅広く学ぶ。現在は、SNS相談・対面カウンセリングのほか、企業研修・人材教育プログラム作成、心理テスト作成、高等学校でのメンタルトレーニングセミナーなど、多くの活動に従事。自治体や大手企業などで、メンタルトレーニングを応用した企業や自治体の研修講師として活躍。2005年1月から半年間、アメリカのNY州にあるグリーンチムニーズ(特別寄宿学校施設)に、日本人の心理カウンセラーとしては初めて、インターンシップに招聘される。

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記事協力
株式会社アイディアヒューマンサポートサービス
公式サイト https://www.idear.co.jp/

<Text:編集部>

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