金哲彦氏 記憶にない残り2キロでの逆転劇 ワンチャンスをものにした駒大、ワンミスが響いた創価大

[ 2021年1月3日 18:30 ]

第97回東京箱根間往復大学駅伝 復路 ( 2021年1月3日    神奈川・箱根町 ~東京・大手町 5区間109・6キロ )

<第97回箱根駅伝 復路>10区、創価大・小野寺(左)を引き離す駒大・石川(撮影・木村 揚輔)
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 最後の大逆転はおそらく誰も予想していなかったに違いない。たすきを受け取った創価大のアンカー小野寺は3分19秒のアドバンテージを生かして無難に入ったので、私も普通にそのまま押し切るものと思っていた。

 創価大は9区まで全員が伸び伸びと走っていたし、アンカーの小野寺だけがプレッシャーを感じていたとは考えにくい。どんなアクシデントがあったのかは本人にしかわからないが、全力を尽くして走った結果なのだから誰も責めることはできない。ここは最後まであきらめずに小野寺を追い続けた駒大・石川の頑張りを称えるべきだろう。

 3位でスタートした駒大は6区で創価大に1分8秒差まで迫り、他校が早々と脱落する中でも8区まで2分差以内に食らいつき、優勝圏内に踏みとどまった。それがまだ経験の浅い創価大の選手たちには無言のプレッシャーになっただろうし、1、2年生が多い駒大には勇気を与え、最後の大逆転につながったのかもしれない。

 それにしての最終10区の残り2キロでの逆転劇というのは記憶にない。私が5区を走った86年の大会で早大が残り10キロぐらいで順大に2分差を逆転されて負けたことはあったが、ゴールを目前にしての逆転は初めてではないか。ワンチャンスをものにした駒大と、ワンミスで優勝を逃した創価大。改めて「箱根は何が起きるか分からない」ということを痛感させられた。

 最後に勝ったのは駒大だったが、今回の主役が創価大だったのは間違いない。出雲が中止になり、全日本も事前の書類選考で出られなかった中で、地道にチーム内でタイムトライアルを繰り返すなど、泥臭く練習を続けてきたのは無駄ではなかった。駒大同様に上級生頼みではない若いチームなので来年以降も上位で優勝争いが期待できそうだ。

 今回はコロナ禍という特殊な状況でのレースで選手たちも本当に大変だったと思う。日程の変更で五輪代表を懸けた日本選手権が12月初めに組まれ、各校の有力選手はそこに合わせて一度ピークを作らざるをえなかった。本来なら一番走り込みをしなければいけない時期に体力を消耗してしまい、その影響で今回は思ったよりタイムが出ない選手が続出した。一日も早くこの状況が収束して、選手たちが何の不安もなく思い切り練習できるようになることを祈りたい。(駅伝マラソン解説者)

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